2017年 3月7日
低賃金にあえぐ人々を追う

沖タイ「『働く』を考える」

 「おばあちゃん、16年も働いているのに時給上がらないの? 高校生のアルバイトでも少しは上がるのに」。昨年6月までホテルの調理場で働いていた元パート従業員の67歳女性は、高校生の孫の言葉を記者に明かす。

 沖縄県民の平均所得は全国の8割に満たない。労働時間は全国平均より長く、社会保険加入率は低い。学芸部くらし報道班の記者3人がさまざまな雇用形態や業種で働く人に取材を重ね、実態を伝えた。第1部「労働者のすがた」を1月10日付から月~水曜に掲載。20人以上を取り上げた。

 取材班キャップの高崎園子記者は、昨年連載した子供の貧困問題を端緒に挙げる。「子供の貧困は大人の貧困にほかならない。低賃金や長時間労働、不安定な雇用が背景にある」

 コールセンターで派遣社員として働く44歳男性は、かつてパソコンの設定や修理をする会社の正社員だった。未払い賃金が10年間で150万円に上り離職した。「正社員が高根の花になった。非正規でどんどん安く雇ったら、みんなどうやって暮らしていくの? 部品じゃないんだから」と取材に答えた。休日はハローワークに通う。正社員の職を求めて3年以上たつ。

 沖縄の低賃金は今に始まった問題ではない。しかし「慢性化すると意識されなくなる。声を上げることも難しくなっていく」(高崎記者)。この分析を裏付けるように、劣悪な労働環境に「あらためて気付かされた」との反響が相次ぐ。

 働き方に関するウェブアンケートも実施し、900近い回答が寄せられた。第1部を終える3月前半に集計結果を出す予定だ。高崎記者は「ずっとそこにある問題なのに、今まで報じていなかった。取材を進めるうちに『新聞が伝えるべき問題だ』との認識を深めた」と語った。(酒)

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