2017年 10月3日
地道な老朽化対応に光当てる

長崎「橋を守る」

 長崎県は「100年以上持たせる」を目標に橋の長寿命化に取り組んでいる。山口恭祐報道部次長が離島をつなぐ長い橋の耐震構造物の付け替え作業から、町中にある5メートルの橋の裏側を金づちで叩く老朽化調査まで取材。橋を維持する取り組みを伝えた。8月17日付から全6回。

 山口氏は3月までの東京支社時代、首都高の老朽化問題などを取材した。本社に戻り「地元のインフラの現状を取り上げたい」と調べる中で、「橋」の問題が浮かんできた。

 高度経済成長期を中心に県内に作られた橋は1万弱。他県と比べ突出した数ではないが、離島をつなぐため大型で特殊な作りの橋が多い。これらは「老朽化すれば架け替える」前提だったはずが、国や自治体の財政悪化に伴い、点検と補修で対応する時代に入った。

 長崎県が何よりも重視したのが人の育成だった。橋の保守・点検には専門技術が要る。他県に先駆け2008年、長崎大とともに講座と検定試験を組み合わせた「道守(みちもり)養成制度」を作り、人材不足の解消に乗り出した。既に600人以上が資格を取り、県内の橋を支える。県外の専門業者に頼りがちだった状況が解消され、地元業者の受注拡大にもつながった。

 「県が真剣に橋の老朽化問題に取り組んでいることに、取材を通じ初めて気付いた」と山口氏。橋を取り上げるのは、完成時などに限られてきたとの思いもあった。「県民の生活を支える橋を守るための地道な活動に光を当てることができた」と振り返る。

 合併により不要となった大きな建物、役場の耐震化、山間部の道路など、インフラの維持と管理は各自治体にとって切実な問題として迫る。「無駄な物を作らず、本当に必要な工事なのかを見極めることが必要。公共事業の在り方は今後も重要なテーマ」だ。(路)

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