弱者も生きやすい社会へ

高知「となり合う個性 精神障害者の県内就業現場から」

 働きたいのに働けない。社会の「当たり前」が分からない。そんな精神障害者の悩みを知ってほしい―。

 高知新聞社に昨夏、一本の電話があった。かけたのは発達障害(自閉症スペクトラム)の診断を受けた42歳の女性。幼少期から周りの物音に過敏な特性に悩まされ、職を転々とする。パートで採用された職場で思い切って上司に診断名を伝えたが好転せず、退職を余儀なくされた。「社会の一員として働きたい」との思いを募らせ、新聞社に助けを求めた。学芸部の徳澄裕子記者が応対し、取材を重ねた。

 女性の訴えを端緒に、発達障害などを抱えた人の就業と支援の実態を6月26日付夕刊から全9回で報じた。昨年度、高知県内のハローワークを通じ就職した精神障害者は延べ245人で過去最多だった。さらに今春、障害者雇用促進法が改正され、新たに精神障害が雇用義務の対象に。求職者は増すとみられる。

 徳澄記者とともに取材した報道部の山本仁記者は、精神障害者が普通の人とほとんど変わらないことに驚いたと打ち明ける。障害者職業センターが「意見が言えない」を「協調性がある」、「融通が利かない」を「粘り強い」に言い換える「リフレーミング」を取り入れていると紹介。「見方を変えれば短所が長所になるのは誰でも同じ。精神障害者は自分と違う存在ではない。身近に感じてほしかった」

 山本記者の胸にはある支援者の言葉が残っている。「道を作る時は、車の運転に慣れていない初心者が走りやすい道が望ましい」。精神障害者が安心して働ける社会は、他の人にとっても生きやすいはず。「『弱者は排除されても仕方ない』という意識を変えなければならない」と山本記者。就業支援を受けていない精神障害者、診断すらされていない人に目を向けることが必要だと語った。(斎)

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