野生動物から過疎地を守る

熊本日日「イノコミ 農家ハンターの挑戦」

 イノシシの被害が中山間地の農家を苦しめている。熊本県のまとめによると、県内の昨年度の野生鳥獣による農作物被害は4億7732万円。その半分以上はイノシシによる。熊本県宇城市で洋ランを生産する宮川将人さん(40)は、度重なる被害に悩む女性農家の「やめてしまおうか」の一言に不安を覚えた。「このままでは地域が立ちいかんようになる」。

 宮川さんは2016年、地域と畑を守るための若手農家グループを設立。狩猟のように獲物を追い回すわけではない。人と野生動物の境界に「ここから先に入ってこないで」と願い「箱わな」と呼ばれる鉄製のおりを置く。現在、約80人。彼らの名は「くまもと☆農家ハンター」。

 地域を超えて広がる活動の輪を追った。10月11日付から全6回。

 取材した内田秀夫宇城支局長は「昔は『自然を守れ』と言われたが、今は『自然から人を守れ』に変わった。過疎、高齢化で人間が弱っている」と指摘する。

 農家ハンターのリーダーを務める稲葉達也さん(40)は、捕獲したイノシシの駆除を担当する。棒状の器具で電気ショックを与えた後、心臓がある前脚の付け根をやりで一突き。現場では無我夢中だが、足が震えていることも。命を奪うことにためらいつつ「誰かがやらなければ」との思いで駆除を続ける姿を報じた。

 若手農家には、県猟友会のベテランが「師匠」として助言する。さらに「地域の協力も不可欠」と内田氏。住民の理解がなければ、イノシシが畑にやって来る途中の獣道に箱わなを置くこともできないからだ。「若手、指導者、地域の三者が協力して課題と向き合っている」。題して、イノシシコミュニケーション。農業に限らない。あらゆる地域課題に取り組む上での理想的な形ではないかとの思いを込めた。(斎)

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