2019年 2月19日
患者の暴力 歯止め訴える

南日本「支えあいの行方 かごしま  第1部 訪問看護師のSOS」

 在宅医療の支え手である訪問看護師が、利用者やその家族からの暴力や嫌がらせにさらされている。南日本が昨年11月に実施した県内事業所への調査で、被害は身体への攻撃、言葉による中傷、セクハラなど多岐にわたることが分かった。取材班5人が悲痛な叫びとその背景を追った。1月30日付から全7回。

 文化生活部の中咲貴稔記者は前職のNHK時代から、地域医療を取材してきた。1年ほど前、長い付き合いの事業所管理者から、看護師が受けている暴力の深刻さを打ち明けられた。「問題提起してほしい」。その言葉が出発点だった。

 中咲氏は兵庫県が訪問看護に関わる職員の相談窓口を設置していると知る。現地に飛び、暴力への対策などを学ぶ研修会に参加。話を聞き、鹿児島の実態を調べることにした。

 調査結果を見て驚がくした中咲氏。殴る、蹴る、暴言、手の甲へのキス、女性の全裸写真を見えるところに置く......。地域医療に不可欠な存在として訪問看護師の重要性を訴え続けてきた。しかし「闇の部分が見えていなかった」。

 調査は「利用者や経営面のことも考えなければならない」と悩む管理者の声も浮き彫りにした。 屋久島町の事業所のある管理者は、職員が被害に遭った際「まず『あなたをしっかり守る』と告げる」。訪問を中止すれば収益が減るが「収益を生むのは現場の職員だという意識が必要」との言葉を伝えた。取材した園田尚志記者は「管理者も看護師を大事にしなければならないとの思いを持っている。制度的な支援が必要だと感じた」と語る。

 中咲氏は兵庫で対策が進んだ背景に、利用者からの暴力を報じた神戸新聞の記事があったと知る。報道に「鹿児島で環境改善を促す契機にしたい」との思いを込めた。(斎)

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