生産者の肉声伝え対策促す

下野「気候変貌 とちぎ・適応への模索 第3部 農業」

 「北海道でも暑さで牛が死んでいる。今の栃木県の気温はかなり厳しい」。宇都宮大農学部の池口厚男教授は指摘する。乳牛のホルスタイン種が快適と感じる気温は15~25度。猛暑の昨年7月は県内で58頭が死んだ。

 農畜産業は猛暑や暖冬の影響をじかに受ける。温暖化対策を探る現場を宇都宮総局の小池竜太記者、社会部の藤井達哉記者が取材した。9日付から全8回。

 大田原市の畜産業「グリーンハートティーアンドケイ」の牛舎は国内に数か所しかない新方式。上下2段、計144台の換気扇が奥行き64メートルの両壁に並ぶ。

 池口教授の検証では、扇風機と噴霧で暑さを和らげる屋根のみの牛舎と比べ最高気温が2度ほど低くなった。搾乳量は1日1頭当たり7キロの差が出た。

 総事業費は約1億6千万円。高橋一文総務部長の「投資した分、非常に効果は高い。これからの酪農を考えると、暑さ対策はますます欠かせない」との言葉を伝えた。

 酪農とちぎ農協の松山秀夫副組合長も昨夏、扇風機や細霧装置をフル稼働させた。消化が良い餌を選び、少しでも涼しい夜に与えた。牛舎の屋根を白く塗る、牛の運動場にシャワーを備える―。松山さんの元には同業者のあの手この手の工夫も伝わっていた。

 牛もばてると食が細る。手をこまぬいていれば生乳の生産量が落ちるだけでなく、乳脂肪分の割合など消費者が求める品質も保てなくなる。病気が増え、繁殖にも影響しかねない。

 しかし対策には手間も費用も掛かる。連載キャップの小池氏は「ジレンマに苦しむ生産者の肉声を伝え、県や生産者団体に対策を促す狙いを込めた」と話す。

 温暖化の影響で集中豪雨が増え、台風も強大化すると言われる。この次は「防災」をテーマとする予定。(酒)

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