2020年 2月11日
家族への思い 贖罪の日々追う

愛媛「塀の中から ~刑務所の今・愛媛」

 愛媛県の松山刑務所大井造船作業場から2018年、受刑者が逃走し、作業場の運営の在り方などが問われた。

 刑務所内の実態は知られていない。事件を契機に刑務所に関心を抱いた報道部の竹下世成記者が受刑者の思いに迫った。出所者を受け入れる企業にも取材した。元日付から全8回。

 県内の松山刑務所と西条刑務支所には計約600人が収容されている。竹下記者が西条刑務支所で取材したヒロコ(46)=仮名=は2年前に入所した。覚せい剤取締法違反罪などで懲役4年。逮捕後、父ががんに冒され、母は余命宣告を受けてあと5年も生きられないと手紙で知った。

 服役は3回目。これまでは「出れば待っててくれて当たり前だと思っていた」。過去の刑務所生活では芽生えなかった贖罪の気持ちが生まれた。取材中、「帰るまで生きていてほしい」とつぶやいたヒロコは、他の受刑者に刑務作業の手順を教える指導役を務める。

 出所者は職に就かなければ生活できず、再犯の可能性も高まる。法務省は支援策として、民間の「協力雇用主」を募っている。

 訪問介護事業を手掛けるケアエンタープライズ(兵庫県尼崎市)はその一つ。これまで雇い入れた出所者は皆、仮釈放期間が終わるといなくなった。社内では、刑務所からの感謝状は「飾らない方が良い」との声が上がる。

 それでもケア社は昨年12月、松山刑務所で介護の職業訓練を受けたカケル(28)=仮名=の採用を決めた。面接した高松知幸取締役は「今度こそ真面目に働き続けると信じている」と取材に答えた。

 愛媛県内には協力雇用主が225社ある。このうち雇用実績があるのは11社。竹下記者は「世間の出所者への目が変われば企業は受け入れやすくなり、再犯者も減る」とみる。(工)

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