闘病の不安 包み隠さず

新潟「53歳記者のがん日記」

 橋本佳周・論説編集委員がドラムを担当するロックバンド「The52's」の公演が昨年11月、新潟日報メディアシップで開かれた。高校の同級生らと35年ぶりに結成した。来場者の多くは、橋本氏がステージ4のすい臓がんと闘う日々をつづった連載の読者。がん闘病の経験者の姿もあったという。

 朝刊で昨年2月、連載を始めた。「ステージ4を生きる」との副題で職場復帰までの日々をつづった。記事を読んだ昔の仲間からのメールを契機にバンドを再結成した。続編として、おとなプラスで初公演までの道のりを紹介。9月から再び朝刊で、闘病の支えとなった逸話などを伝えている。今年6月5日付で通算43回を数えた。

 闘病生活が始まったのは2018年7月。腹痛と倦怠感のため訪れた病院ですい臓がんの診断を受けた。化学療法の効果がなければあと数か月の命、と告げられる。入院を経て約2か月半後に職場復帰し、働きながら治療を続ける道を選んだ。

 当初は執筆をためらったという。客観的に伝えられるのか、という不安。恥ずかしさもあった。「家族の悲しむ顔を思い出すこともつらかった」と振り返る。それでも「等身大で書かなければ、伝わらない」と覚悟を決めた。

 今年2月14日付では「検査結果の値一つに心を乱される」と不安をさらけ出した。闘病の苦しみは「本人にしか理解できない」と橋本氏。連載には、同じ病を抱える人の気持ちを代弁したい、との願いを込める。

 がん患者やその家族らから寄せられた反響は100通以上。医療従事者の声も届く。彼らは「『がん患者が内心、どんな思いで過ごしているのか』に関心を持っている」(橋本氏)という。

 橋本氏は一通一通に返事を書く。連載は「返事を書く延長という感覚もある」。今後も読者との対話を続ける。(斎)

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