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消滅危機の町変える高校改革

北海道「まなびじまの留学生」

 奥尻町が消滅する可能性は、北海道内の自治体で最も高い―。民間有識者で作る日本創成会議が2014年、若年女性の人口減少率の試算から予測を立てた。危機感を募らせた町が打った手は、島で唯一の高校・道立奥尻高の町立への移管。町主導で独自の教育を打ち出し、全国から生徒を募ることにした。

 20年度は21人を受け入れた。全校生徒80人中、48人を町外出身者が占める。江差支局の古田裕之記者が計10日間ほど奥尻島に滞在し、高校を軸とする町の活性化策の進展を取材した。7月21日付から全3回。

 新生奥尻高の売りは、スキューバダイビングによる海中観察や北海道南西沖地震(1993年)の教訓に基づく防災学習。自然豊かな島全体を学習の場と位置付ける。

 町が負担する経費は、教職員の人件費を含め年間約6千万円。移管に伴い倍に膨らんだ。19年には1億3千万円を投じ、留学生の寮を新築。さらに今年、1億4千万円かけて増築した。

 今春卒業した留学1期生3人は皆、奥尻を離れた。島は就職先が限られる。留学生受け入れが、ただちに定住に結びつくわけではない。「高校ばかりにお金をかけすぎ」「老朽化する病院に振り向けるべきだ」といった町民の不満の声も伝えた。

 古田記者は北海道東部の足寄町出身。地元でも、高校が留学生を集めている。地方はとかく閉鎖的で、変化を望まない人もいるとし「なぜ外から来た人のためにお金を使うのか、と反発する住民の気持ちは実感として分かる」と話す。

 奥尻高は留学生と町民の交流も重視する。月3回の英会話学習会には、高齢者も顔を出す。古田記者はこの光景を見て、高校への投資の恩恵が町民に広がっている、と感じた。「町民も成長できるし、町も変わる」。取材を通じ、こう考えるようになったという。(酒)

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