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娯楽でつながる昔と今の心

熊本日日「肥後にわか~笑いの来た道」

 「肥後にわか」は熊本が生んだ伝統の喜劇だ。

 夫婦げんかなどの小さな騒動が最後には丸く収まる、といった簡単な筋書き。それを熊本弁で、地元の話題を交え滑稽に演じる。戦後のラジオ放送で脚光を浴び、祭りに欠かせぬ存在に。昭和30年代に全盛を迎えた後は下火になったものの、現在もプロの劇団が存続する。

 文化生活部の松尾正一編集委員がその歴史をひもときながら、文化を継承してきた演者や識者らの声を伝えた。夕刊で2018年5月25日付から今年6月26日付まで全26回。

 松尾氏は1985年、肥後にわかの全盛期を支えた劇団の創設者・蓑田又雄さん(92年没)の半生を振り返る連載を担った。その際、蓑田さんから直筆のノートを預かる。自らの足跡を残したい、との気持ちを感じ取った松尾氏。しかしその後30年以上、ノートを本棚に眠らせていた。

 約40年の記者生活の中で「やり残した宿題」だった。にわかを知らない若者が増える中、蓑田さんの思いに応えるため取材を始めた。

 にわかの特徴は同じものを再演しないことや、客席の空気を読んで繰り出すアドリブ。その笑いは「台本そのままじゃなくて芸人個人が作る」とのプロ劇団の団長の声を紹介した。

 松尾氏は地域の若者がにわかを披露する高森町で、稽古の様子を見学した。芸能人の不倫騒動など時事ネタを取り入れ、祭りでのお披露目に向け仕上げる。渾身のオチは「デート代は700円。まあだ1千(一線)は超えとらん」。

 にわかの起源は中世にさかのぼるとも言われる。松尾氏は「古い時代から伝わる娯楽を面白がる心が、自身にも息づいていると気付いた」と語る。若者が、普段は感じにくい「昔の人とのつながり」を発見する契機になってほしい、との思いも連載に込めた。(斎)

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