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民間開発地 住民の奮闘たどる

神戸「上水のないまち ネオポリスの螺旋」

 兵庫県三田市の山裾に並ぶ約100戸の「有馬富士住宅」は1972年の造成以来、生活用水を井戸水で賄ってきた。配水を止めた昨年まで、自前の水源を50年近く使った。

 高齢化が進む三田の住生活を考察する連載の第1部。ニュータウン造成と同時期に広がった民間開発地の紆余曲折を北摂総局の小森有喜記者が取材した。9月10日付から全3回。

 民間開発地の一つ・有馬富士住宅では79年夏、井戸が枯れた。問い合わせた住民に市の担当者が告げた。住宅地内の道路が市道になっておらず、上水を通せない―。「正直、しまったと思いました。でもローンを組んで今更動けない。腹を決めるしかありませんでした」。当時から住む小東裕さん(74)が語った。

 開発業者は既に倒産。住民で管理組合を作り、くみ上げ・配水施設の運営費を集めて対処した。水量が落ちると市に掘削を求めた。業者名義の私道だった道の市道化も進める。区画整理で土地が減る世帯もあり、合意形成は難航したが92年に実現。その後、上水を通す工事費の負担は1戸最大200万円に上った。

 県は70年、ニュータウン開発に伴い市域の4割を都市計画区域に。残る空白地を民間業者が相次いで開発した。「行政が管理せず、20年以上も手を付けなかったことが問題を大きくした」(小森記者)。市が開発を規制したのは96年だった。

 初回掲載後、小森記者は市西端の開発地「三田グリーンヴィラ」に住む女性(52)から電話を受けた。道路が陥没したが、私道のため市は手を打てない。この住宅地の現状も伝えた。

 女性らは記事で有馬富士住宅の事例に感銘を受け、市への働き掛けを模索しているという。「行政がどう対応するか、注目している」と小森記者。(酒)

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