1. トップページ
  2. 刊行物
  3. 新聞協会報・記者駆ける
  4. 日陰の職業人のたくましさ

2020年 11月10日
日陰の職業人のたくましさ

西日本「NICHE―MEN オレの仕事、アウトですか?」

 熊本県に住む浩介(50、仮名)はDVDなどのアダルト商品販売で生計を立てる。販路は約80台の自動販売機。熊本、鹿児島、山口の3県に点在するプレハブ小屋を日々巡回する。人通りの少ない場所に小屋を構え、自販機を置いている。年間の売り上げは最盛期の20分の1ながら、この道一筋で生きると決めている。

 憧れの職業に挙げられることはなくとも、需要があるからこそ存在するなりわい。政治部の御厨尚陽記者(取材当時社会部)が、怪しげな隙間産業に従事する人物に迫った。10月24日付から全5回。

 浩介の取材は、アダルト自販機を特集した書籍がきっかけ。本の中の写真などを手掛かりに小屋を探し、張り込んだ。姿を現した浩介は御厨氏に「警察の方ですか?」と尋ねたという。浩介は青少年健全育成条例違反などの容疑で計4回逮捕されていた。

 浩介が業界に足を踏み入れたのは1991年。アダルト自販機の売り上げを回収するアルバイトで日に40万円稼ぐ台があることを知り「エロは絶対につぶれない」と実感。自ら約30道県に自販機を置き、一時は約20人の従業員を抱え年間6億円を売り上げた。20代で千葉県に家を建て、妻子と暮らした。

 その後、インターネットの普及で上客を失い、浩介は現在1人で仕事を続ける。家賃2万5千円のアパートに1人暮らし。妻とは離婚した。御厨記者は、小さな市場は社会情勢の変化にさらされやすいと指摘する。

 自販機は今も高齢者の需要がある。「元気なじいさんたちを見習って、まだまだがんばらないといけない」との浩介の言葉を伝えた。新型コロナウイルス禍で多くの人が苦しむ今こそ「落差の激しい人生を生き抜いてきた、たくましさを伝えたかった」と御厨記者。(斎)

ページの先頭へ