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子を失った親はどう生きる

信濃毎日「無言のサイレン 子どもの命を救うために」

 長男は中学3年生の時、自ら命を絶った。何かに悩む様子はなかった。遺書もない。「なぜなんだ」。10年ほど前に息子を亡くした40代男性は、見つからない答えを探し続けている。

 長野県は、10万人当たりでみた未成年者に占める自殺者の割合が2009年から11年連続で全国平均を上回る。文化部の上野啓祐記者が遺族の苦悩、子供の居場所をつくる取り組みなどを追った。「悲しい実態にまず目を向け、身近な子供との向き合い方を見直す契機にしてもらう」(上野記者)ことが狙い。11月29日付から計7回。

 上野記者は複数の遺族に話を聞いた。しかし「やはり話せない」とその後の取材を断られることが続いた。心の整理がつかない遺族に話してもらう難しさを知り「彼らの声は社会に届いていない」と感じたという。

 子供の自殺対策に取り組む臨床心理士から冒頭の男性を紹介された。男性は、息子の死を「乗り越えられたわけではない。一生できないと思う」と上野記者に告げた上で取材に応じた。「遺族の気持ちを広く知ってほしい。同じ立場の人に寄り添いたい」との思いも上野記者に明かした。

 男性は長男の葬儀後、深い悲しみと「気付いてあげられなかった」という罪悪感に襲われた。苦しみの末「大人自身が夢を持って生きることが子供の未来につながるのではないか」との考えにたどり着く。数年前から、さまざまな世代が集まり将来の夢などを語り合う場を定期的に開いている。参加者の一部に息子のことを打ち明けた。

 上野記者は遺族について「自分が子供を死に追い込んだ加害者かもしれない、という苦しみを人に言えず抱えている」と感じたと振り返る。「彼らがどう生きていくのか、そのヒントを示したい」との思いを連載に込めた。(斎)

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