2021年 3月9日
人とシカ すみ分けの道探る

熊本日日「エゾシカ知床事情 くまもと 鳥獣被害の現場から 第4部」

 造林地でヒノキの苗木を食い荒らすニホンジカ。農地ばかりか住宅地にも姿を現すイノシシ。

 人と野生動物のすみ分けが崩れつつある。打つ手を探るため、長くエゾシカ対策に取り組む北海道の「知床財団」を編集二部(前宇土市局)の西國祥太記者が取材した。2月19日付から全5回。

 知床財団は北海道斜里町が設立した。知床半島と周辺部の自然環境の調査などを担う。環境省の委託を受け2007年から、個体数の管理計画に基づきシカを捕獲している。12年間で5335頭を捕らえた。

 シカは警戒心が強く、学習能力もある。知床岬での捕獲数は07年が132頭。19年は3頭。財団の保護管理部長、石名坂豪さんは「5年前に有効だった捕獲方法が現在では効果が薄い」と話す。いまの主流は通り道に仕掛けて脚をワイヤーで捕らえる「くくりわな」。先進地の知床地域でも、新たな捕獲方法を模索していることを伝えた。

 養鹿場を併設する食肉処理施設も取材した。捕獲されたシカは無償で持ち込まれていたが、近年は知床一帯でシカが捕れにくい。養鹿場にいた数百頭は、100キロ以上離れた別海町で生け捕りにしたものだった。

 食肉の主な出荷先は東京や大阪の高級レストラン。しかし、新型コロナウイルス禍でシカ肉を食べる外国人観光客が減り、20年の出荷実績は前年比で6割ほどに。

 捕獲した野生動物の食肉活用は「素晴らしい仕組みと言われているが、軌道に乗せるのは難しい」と西國記者。熊本県内の現状を第5部で掘り下げるという。

 里山集落に住む人が減り、シカやイノシシは踏み込んでも追い払われなくなった。耕作放棄地が増え、餌場も広がる。野生動物の被害が増えたのは「人が弱くなっているからだ」と西國記者はみる。(酒)

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