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2022年 1月11日
違法風俗店 働く女性の声記録

神戸「色街が消える――尼崎・かんなみ新地」

 兵庫県尼崎市の色街、通称「かんなみ新地」。終戦直後から「飲食店の従業員と客が恋に落ち、体を重ねる」という建前の下、非合法の風俗店が軒を連ねてきた。その存在は「暗黙の了解」とされていたものの、尼崎市長と兵庫県警尼崎南署長が昨年11月、同新地組合に対し違法な風俗営業をやめるよう求める連名の警告書を出した。これを受け、組合加盟の約30店が間もなく風俗営業を終了した。

 阪神総局の大田将之記者ら3人の取材班が風俗店で働く女性や、市や警察の関係者を取材。この街の歴史を追うとともに、警告に対するそれぞれの見方を伝えた。11月24日付から全3回。客のいなくなった店の入り口で光を放つ看板など、消えゆく色街を捉えた写真を1回につき3枚ずつ添えた。

 店を切り盛りする女性は「ママさん」と呼ばれる。「あまりに突然のことで。てんやわんやで......」と話すあるママさんは組合から警告について聞かされた後、女性従業員一人一人に電話を掛け事情を説明。なりわいを突然失い、震える涙声を電話越しに聞いた。

 大田記者はママさんが声を絞りだすように「わたしらの商売ってこんなもんなんかなぁ」とつぶやいたことが印象に残っていると話す。生活の危機に直面させられても「非合法で営業してきた負い目から、行政に対し怒りをぶつけられない」様子が生々しく表れた言葉だと感じ、記事で紹介した。

 立ち退きを求める陳情が地元で続いてきたことや、行政が摘発に手をこまねいてきた実態なども報じた。誰もが違法だと分かっていながら、人々の後ろめたい欲望や無関心の中で約70年間存続してきた色街。大田記者は「誰が悪いと簡単には決められない」と話す。色街が人知れず消えていく事実を記録として残したいと考えたと振り返る。(浅)

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