2022年 2月22日
産業支える軟水 地質に秘密

岐阜「岐阜のタカラ研究~水脈を探して」

 「岐阜県のタカラは何か」。約50人の記者が昨秋、取材先で出会った県民ら444人に聞いた。「川」「鵜飼」「清流」「鮎」など水にまつわる回答が多く寄せられたという。人々が愛する「岐阜の水」の豊かさにどのような秘密があるのか、水は地場産業の発展にどう寄与したか。1月1日付朝刊から全5回でひもといた。

 取材した瀬戸覚旨報道部記者は南関東出身。地元ではあまり良い印象を持たれない地下水が、岐阜ではなぜおいしいのかについて探った。

 連載によれば、岐阜県内の地質を構成する堆積層やチャートには、水の硬度を決めるカルシウムやマグネシウムの含有量が少なく、川の流れも速い。こうした理由から岐阜の水が苦みの少ない軟水になりやすいという。瀬戸記者は木曽川などが向かう低地の西美濃の地下は、深さ数百メートルの「天然の貯水庫」のような構造になっていると伝えた。

 この軟水は、美濃焼で知られる陶磁器産業を成長させた。岐阜県は飲食器や洗面台など衛生陶器に欠かせない白い粘土の希少な産地とされる。多治見市にある陶土の製造販売会社の社長によれば「世界最高の粘性」を持ち、硬水を含む海外産の粘土と比べ乾きやすい点が特長だという。

 180年続く飛騨市の造り酒屋の社長は、人の好みに合わせて日本酒の味を「少しずつ軽くしている」と瀬戸記者に明かした。その上で「県内に伝統的なものが多く根付いているのは、小さな変化に対応し続けてきた結果だと思う」と語った。

 連載担当の馬田泰州報道部副部長・地域統括デスクは「自分たちが無意識に誇りに思っている『タカラ』に、確かな理由があったことに驚いた」と話す。今後も「タカラ」への思いを県民に取材することで「普通の人が語るちょっと普通でない話」が見つかるかもしれないと述べた。(海)

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