2022年 7月26日
情報公開の在り方を問う

熊本日日「くまもと発 司法の現在地 不起訴の陰影」6月5~11日(全7回)

 検察官が事件の容疑者を刑事裁判にかけない「不起訴処分」が増えている。社会部の植木泰士記者によると、不起訴事件は記録の閲覧ができない上、近年は検察側が不起訴の理由をほとんど明かさないという。

 植木氏ら6人の取材班は、熊本県内で起きた不起訴事件を巡り、検察官や弁護士、被害者遺族らを取材。不起訴に至る経緯が見えにくい現状に迫った。

 息子を車ではねた相手が不起訴になる――。被害者遺族の女性は検察側に処分の見通しを告げられ、がくぜんとした。車を運転していた男性は、自動車運転処罰法違反の疑いで現行犯逮捕されていた。検察側は処分の理由を一切、明かさなかったという。女性は「息子がどのような最期を迎えたのか、裁判を通して加害者の口から聞きたかった」と悔しがった。

 「不起訴により事件の真相が埋もれる状況に強い疑問を感じる」と植木氏。警察の逮捕やその後の捜査、不起訴の判断が適切だったのかを監視・検証するためにも「検察側が情報公開に対し真摯(しんし)に向き合うべきだ」と話す。

 一方で、検察側の情報公開に対する消極的な姿勢に「メディアが対抗してこなかった責任も大きい」と語る。現在、熊本地検では次席検事が週2回、各報道機関の個別取材に応じている。時間は1回当たり5分間。この対応は地検と司法記者クラブがかつて結んだ取り決めに基づく。「十分な取材ができない。慣習を覆すのも難しい」と指摘する。

 連載では、記者が正面から取材しても、検察側が不起訴の理由について答えない姿を繰り返し報じた。植木氏は「家に行ったり、飲みに行ったりして検察側の懐に入るべきだ」との助言も社内で受けたと振り返る。こうした考え方に対し「属人的でない、開かれた情報公開の在り方を求めることが大切だ」との思いを明かした。(浅)

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