2023年 1月24日
文化継承 住民の奮闘に迫る

福島民友「風吹く茅」12月25~28日(全3回)

 日本の伝統文化で、福島県内に点在する「茅葺(かやぶ)き屋根」。茅葺きは2020年に「伝統建築工匠(こうしょう)の技」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された。他方、近年は茅葺き屋根の修繕などに関わる職人が減少。国内の職人は20年間で3分の1に減ったという。茅(屋根を覆うススキやヨシなどの総称)を採取する草地(茅場)も不足している。

 報道部の斉藤隼人記者は茅葺き屋根を持つ温泉宿「ぬる湯温泉 二階堂」(福島市)の愛好家から届いたメールを契機に取材を始めた。メールは「茅葺き屋根の維持が難しくなっている」と訴えていたという。斉藤記者は報道部の中島和哉デスクと共に、茅葺きの文化を継承しようと奮闘する地元住民らの取り組みに迫った。

 茅葺き屋根は定期的に葺き替えが必要となる。連載は16年ぶりとなるぬる湯温泉の宿泊棟の屋根の葺き替えを取り上げた。斉藤記者は地元の有志が葺き替えを支援しようと結成した「ぬる湯温泉茅屋根維持保全プロジェクトの会」を紹介。会が必要な量の茅を確保したり、今後の補修に備え茅場の維持管理を担ったりしたと報じた。

 葺き替えは輸送費や人件費などで総額2千万円以上がかかった。斉藤記者は「茅葺きを後世に残したいと願う住民の熱意が、屋根を守る宿の経営判断を後押ししたのではないか」と話す。

 県内のいくつもの農地は、東京電力福島第1原発事故後に耕作放棄地となった。田村市の耕作放棄地はススキが自生する。斉藤記者は、この土地を借用し茅場に活用する田村市の美術家・佐藤香さんにも取材。佐藤さんが茅を使ってランプを制作するワークショップを開いていると報じた。佐藤さんの活動について、茅は古民家に使うものだとの印象を払拭し、別の魅力を伝えているとみる。今後も「新たな活用法に挑む人の声を伝えたい」と話す。(遼)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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