2023年 3月14日
一歩踏み出す難しさに焦点

新潟「ともしび求めて ひきこもり支援の模索」 1月29日~2月1日(全4回)

 新潟県下越地方に暮らす50代の女性は、中学生の頃に受けたいじめが原因で会話が苦手になった。高校卒業後は職を転々とし、やがて「ひきこもり」状態になった。「好きこのんで、引きこもっているわけじゃない」――。そう話す女性の今の生活は20年以上続いている。

 報道部の中村茂雄記者は、ひきこもりの当事者が抱える葛藤に焦点を当てた。県内外の自治体やNPO法人などを取材し、当事者支援の課題にも迫った。

 連載で登場する当事者の多くは、記者と同じバブル崩壊後の就職氷河期世代に当たる。「紙一重で自分も同じ立場にいたかもしれない」との考えが取材の原点にあると話す。

 女性は支援機関について書かれた新聞記事を手元に置いていた。それでも、支援機関に連絡するまでに2年近くかかった。同居する80代の母親を支える介護士らと会話を交わす際も「嫌なことを言われるのではないか」と不安に感じるという。

 中村記者は「社会復帰に向けた一歩を踏み出すまでに時間がかかる実情を知ってほしかった」と説明する。当事者に対して持たれがちな否定的な印象を拭い去りたいとの思いが根底にあるという。

 新潟市の相談支援センターの職員の声も紹介。行政の相談窓口を頼ることに抵抗感を抱く当事者もおり、「支援の選択肢を広げることが問われている」との職員の指摘を報じた。職員が福祉関係者の集う研修会などで、当事者やその家族からの電話相談に乗る際の留意点などを助言する様子も伝えた。

 「当事者を支える方法に正解はない」と中村記者。「支援者の力になる報道を続けたい」と語る。今後も地域のNPO法人や社会福祉協議会など支援の最前線で奮闘する人々の取材に注力する。(直)

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