2023年 4月11日
漁獲量管理の制度不備指摘

東奥「疑惑の漁場 大間・マグロ不正事件」3月15~19日(全5回)

 漁業法30条は資源管理を目的として、クロマグロなどの特定水産資源の漁獲量を県などに報告するよう漁業者に義務付けている。東奥は2021年11月、青森県内の一部の漁業者が県などに報告していないクロマグロを卸売業者らに売っている実態を特報。問題はその後、刑事事件に発展した。それでも「罰金30万円で済むなら無報告を続けた方が稼げる」とささやく漁師もいるという。

 「ルールを守る人が損をする現状を変えたい」。報道部の鳥谷部知子記者ら8人の取材班は、地元の漁師や水産物の資源管理に詳しい有識者らを取材。漁獲量の管理に関わる制度の抜け穴を指摘した上で、不正防止策について伝えた。

 報告義務を守っている地元漁師は、罰則が軽いままでは報告しない人が増えるだろうと不満を漏らす。鳥谷部氏は、現行の制度について「漁業者のモラル頼みになっている」と指摘。「誰が、いつ、どこに販売したのかを漁獲量と共にたどれる仕組みが必要だ」と説く。流通過程の透明化を訴える有識者らの声を連載に載せた。海外での無報告防止策の事例も紹介した。

 特報は「水産庁も県も動いてくれない」とこぼす町民からの情報提供が後押しになった。鳥谷部氏は「最後のとりでとして報道機関を頼ってくれたことに応えるべく取材に当たった」と振り返る。一連の報道後、他媒体でも取り上げられた。鳥谷部氏は「不正が発覚しにくい現行の制度の問題点を明るみに出せた」と話す。

 しかし、「課題解決の壁は高かった」。取材班は不正の実態について水産庁や県に取材。「個別事案なので答えられない」とする担当者らの一点張りの態度を連載で報じた。

 鳥谷部氏は、県内で何が起きているのか全く見えてこないことにいらだちを覚えたと話す。不正を防ぐには「疑惑の温床を解明する必要がある」と強調する。今後も粘り強く問題提起を続け、行政や違反者に目を光らせる。(浅)

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