2023年 5月9日
閉校巡る子供の思い届ける

長崎「消えゆく学びや 対馬の統廃合から」 3月19~23日(全5回)

 長崎県立対馬高2年の齋藤みずきさん(16)は母校である対馬市立佐須中学校の校舎を眺めてつぶやいた。「中に入りたい」。同校は生徒数の減少で昨年3月に閉校。校門には「立ち入り禁止」と書かれた紙が張られていた。齋藤さんは小学5年生の頃にも通っていた小学校が閉校した経験を持っており「寂しさを感じることは少なくない」と語った。

 長崎県教育委員会によると、昨年4月までの10年間で県内の公立小中学校の統廃合は65件。このうち対馬市は最多の11件だった。対馬支局の手島聡志記者は、背景として少子化などを挙げた上で「統廃合が進むことについて地元住民が『諦め』のような気持ちを抱えていると感じた」と話す。こうした中、閉校する学校に通う児童や保護者らに統廃合に対する率直な思いなどを尋ねた。

 手島記者は「子供の意見を読者に届けることを特に重視した」と説明する。高校の同級生が「(母校の)中学に遊びに行った」と話すのを聞き、「私には行く場所がない。高校の制服姿を母校の先生に見せられない」とうらやましがる齋藤さんの思いを連載で紹介した。

 齋藤さんは「廃校舎を何かに活用してほしい」とも話した。手島記者は、閉校した小学校を食堂などに改修し地域活性化を図る民間事業者の活動を取材。市内にある22の廃校舎のうち、整備が進むのは1校のみだった。手島記者は整備の促進に向け「統廃合と、閉校した校舎の活用を一体で検討する行政の姿勢が重要だ」と指摘する。

 学校は行事などの際に近隣の人々が集う「交流拠点」の機能も持つと手島記者。統廃合は子供や教委など学校関係者だけに関わる「局地的な問題」ではないと強調する。連載を通じ統廃合の議論を地元住民に喚起したいと話した。(直)

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