2023年 9月26日
悲しみだけでない複雑な思い

室蘭「遺された私たち 自死遺族の声 西胆振」 8月11~13日(全3回)

 西胆振地方のAさん(40代)は高校生のときに父親を自死で失った。原因は分からず、もどかしさを募らせた。高校卒業後は「故郷に母を一人で残すわけにはいかない」と、進学せずに地元で就職した。Aさんの母親は夫の死から四半世紀がたった今も「子育てを放棄し、子供の人生を狂わせた」と夫に対し憤りを感じている。

 家族を自死で亡くした「自死遺族」。札幌支社の伊藤真史記者は、身内を失った悲しみやつらさにとどまらない遺族の「複雑な思い」に焦点を当てた。西胆振の自死遺族と、遺族を支援する人々に話を聞いた。

 Aさんは父親の一周忌をきっかけに、気持ちの整理がついたと伊藤記者に話した。伊藤記者は、地元に残ったことで尊敬できる人に出会えたと父親に感謝するAさんの姿を伝えた。Aさんの母親が夫に抱く憤りの感情にも触れ「気持ちの強弱はあれど、命を絶った当事者に対する考え方は遺族によって異なる」ことに気付いたと振り返る。取材を通じ、遺族が抱える思いに対する「先入観」を自身も取り除く必要があると考えたと説明する。

 昨年3月に発足し、親族の自死に直面した経験などを語り合う西胆振の交流会の様子も取材した。「自死する人は身内に弱みを見せない。だから残された家族は自分を責めないで」と話す西胆振在住の参加者の声を取り上げた。遺族と同じ境遇にある地元の読者に対し「苦しい胸の内を理解してくれる人が身近にいると伝えたかった」と強調する。

 「誰もが自死遺族の当事者になり得る」と伊藤記者。連載を通じ、「社会全体で理解を深め、遺族への支援の輪を広げることが重要だ」と話した。遺族の思いを報じることで、自死を考える読者が思いとどまる端緒にもしたい――。そうした思いも込めた。(直)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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