2024年 4月23日
病より人と向き合う

京都「旅立ち――ホスピスから ヴォーリズ記念病院にて」 3月4~6日(全3回)

 滋賀北部総局の記者だった杉原慶子氏(現ニュース編集部)は昨年7月から「ヴォーリズ記念病院」(滋賀県近江八幡市)のホスピスを取材した。「病でなく人に向き合う」と話す細井順医師の心構えと、終末期医療に関心があった。定期的に通ってはどうかとの医師の提案を受け、週に1度訪問。医師に同行し患者と3人で話すなどして取材を進めた。

 当初は「死の現場に踏み込んでいいのか」との葛藤を抱えていたと明かす。認識が変わる契機は89歳で亡くなった女性のお別れの会に立ち会ったことだった。家族や医療スタッフが故人をしのぶとともに、互いに感謝を伝え合う様子を目の当たりにした。「(患者、家族、医療者が)一丸となる中で、穏やかな死が迎えられている」(杉原氏)。悲しみだけでなく、そこで感じた「不思議な温かさ」などを伝えなければならないと考えた。

 連載は患者と対話する医療者の姿や、みとりの現場などに焦点を当てた。医師らに人生を回顧した女性の「こんなことを聞いてくれる先生は初めて」という生前の言葉などを取り上げた。

 人生の残り時間がわずかな相手にどう取材すべきか、最後まで悩み続けたという。医師からは「一人の人として向き合い、関心を持っていると伝えることが大事だ」と助言された。杉原氏は「取材者でありつつ踏み込んで話を聞き、相手のことを考えることが増えた。人と人として関係を築けるよう努めた」と振り返る。

 ある男性患者は「勇往邁進」の言葉を病室に飾っていた。「どんな困難でも、勇気を出して乗り越えて、初めて前に進める」という意味だと男性が教えてくれたことを連載で紹介した。男性は取材の後、亡くなった。

 「死を意識することと、人生を懸命に生きることは矛盾しない」と杉原氏。連載について「『どう生きるかを考えると同時に、死を学ぶこと』の大切さを知るきっかけになってほしい」と述べた。(斎)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

ニュース&トピックス

ニュース&トピックス

ページの先頭へ