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2024年 11月26日
住民主体の地域再生に焦点
秋田魁「復興への道しるべ 長野・長沼からの報告」 10月30~11月4日(全5回)
長野市の長沼地区は2019年の台風19号で、千曲川の堤防が決壊する被害を受けた。地区の自治会長だった柳見沢宏さんは被災後、住民集会に国土交通省の担当者らを招き、住民の声をぶつけた。省庁を訪ね、住民の要望を伝えることにも励んだ。その結果、復旧工事では越水で堤防が削られるのを防ぐための対策が施された。
社会部の三浦正基記者は全国紙の記者として、被災当時の長沼地区を取材していた。近年は秋田県でも災害が相次ぎ、地域社会の維持に向けた取り組みなどが課題となっている。多くの被災地が抱える課題に住民自らが主体的に挑み、地域再生を目指す長沼地区。三浦氏はその活動について、秋田での復興を考えるヒントにもなると捉え、柳見沢さんらに取材した。
「住民から声を上げることが大事だ」――。柳見沢さんはそう語った。三浦氏は柳見沢さんの言葉を通じ、安心して暮らせる地域づくりのために住民の思いを集約し、行政に直接働き掛ける手段の有効性を伝えたかったと振り返る。
災害の記憶を継承することも課題となっている。連載は、被災時に住民への避難を呼び掛けた消防団員を題材とした短編映画を紹介。映画を公開した今年10月の追悼イベントには、想定の約2倍の住民らが集まったという。三浦氏は、被災後に他地域へ移る人が出てくるなど、時間が経過するほど「人々の『共通項』はなくなる」と説明する。映画などを通じ災害の教訓を伝える試みは、地域のつながりを維持する手立てにもなると話した。
昨年水害の影響を受けた秋田市でも、市の委託で被災者を支援する地域サロンが開かれている。三浦氏は「被災後の地域の在り方は住民自身が考えることが大切だ」と考える。行政やボランティアの力を借りるなどし、住民が顔を合わせ語り合える場を持つことが重要だと述べた。(直)
※連載はこちら(他社サイトに移動します)