2025年 11月11日
制度の光と複雑な課題に焦点

東奥「家族のカタチ あおもり・里親の今」 9月28~10月1日(全4回)

 児童養護施設よりも家庭に近い環境で子供が暮らせるよう、国は里親制度の普及に力を入れる。青森県も今年3月、親元で暮らせない子供のうち、里親の元で暮らす割合「里親委託率」を2029年度までに7割超まで引き上げるとの指針を発表した。しかし、24年度時点で約3割だった。

 報道部の相澤賢斉記者は、県内の里親制度の現在地を記録・周知する必要性を感じた。連載の第1弾として、里親家族の実像を探ることを主眼に置き、3人体制で取材した。

 虐待のニュースに心を痛め里親を志し、受け入れた子供と養子縁組を結んだ夫妻は、不妊治療に悩んだ過去があった。「小学生の子供は「大声で叫んだり、反抗的な態度を取ったりして苦労する」が、「出会えて良かった」と語る様子を伝えた。親子をつなげる役割を果たす、制度の光の側面を映す狙いがあった。

 里親家族が直面する問題にも焦点を当てた。「子供に『実親に会いたい』と言われたらどうするか」との質問に対し、夫妻は一瞬言葉を詰まらせ「その時に考える」と答えたという。「里親が抱える複雑な心境を垣間見た」と相澤記者。連載では、子供に実親の存在を知らせていない里親もいることを説明し、告げる時期の難しさにも触れた。

 「親子の関係が悪化し委託が解除されては本末転倒だ」との専門家の声を取り上げ、子供を受け入れる家庭環境の整備が必要だと訴えた。相澤記者は「委託率を高める上で、現状の支援体制では不十分だ」と指摘。県内には、たった一人の担当者で運営している里親支援機関もあると話す。「準備不足のまま突貫工事を進めてはならない」と語気を強めた。

 連載は「里親制度に関する取材の出発点だった」(相澤記者)。今後は委託率の推移や支援体制の整備状況を注視する。「デリケートな問題」だが「子供から見た実親の存在」にも踏み込む覚悟だ。(丈)

 ※連載はこちら(他社サイトに移動します)

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