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2025年 12月9日
深刻な人手不足の現場に密着
北海道「限界 地域医療」第1部「釧路赤十字病院ルポ」11月23~26日(全4回)
午前0時半の釧路赤十字病院(北海道釧路市)。真っ赤な顔で痛みを訴える患者が運ばれてきた。宿直で対応するのは研修医1年目の医師。必要な処置を施し、引き継ぎを終えた頃には午前3時を過ぎていた。前日朝8時に受けた研修医向けの講義から19時間超にわたり働いていた。
医師の総数が全国的に増加傾向にある一方、都市圏に医師が集中し、地方との格差が拡大している。報道センター社会遊軍の工藤俊悟記者は同病院で一週間寝泊まりし、人手不足が深刻化する医療現場に密着した。記者の受け入れ先を探す交渉は難航すると予想したが、杞憂に終わったという。「厳しさを増す現状を伝えたいとの病院側の思いを強く感じた」
取材で見えたのは、過酷な環境で働く医師の姿だった。「一分一秒が惜しい」と、飲み物を手に取る余裕もなく患者と向き合う医師、診療を待つ患者のために昼休憩を早々と切り上げる医師―。「自らの心身を削る努力で診察の時間を生み出す姿」で成り立つ病院の実態を伝え、地域医療が崩壊の危機に瀕していることに警鐘を鳴らした。
研修先に釧路を選ぶ医師の存在が「光」になるか。研修医1年目の医師は、地方では「研修医でも最前線に立つことができる」と魅力を語った。研修医2年目の医師にも取材。広大な医療圏に専門医が十分いない現状を目にし、「なんとかしたい」との気持ちが強まったとの思いを聞いた。
連載は当初、地域医療の未来を前向きな視点で報じる想定だった。しかし、研修医らにすがるしかないほど厳しい現実を伝えるべきだと考えた工藤氏。研修医らのような「わずかな光に望みを託している」と連載を結んだ。
連載は道内の地域医療が直面する課題に焦点を当てた年間企画の一環。今後は患者が抱える多様な健康問題に対応する総合診療医などを追う。(直)
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