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2026年 2月10日
当事者への理解促進に注力
福井「福井発・カナリアの警告~香害という『公害』」12月10~18日(全7回)
後藤千佳子さん(仮名)は、2022年夏ごろから柔軟剤などの人工的な香りに苦しんでいる。吐き気や頭痛、腹痛などの症状が現れ、顔や手が腫れる。外出時は近所へのごみ出しでも、帰宅後にシャワーを浴びなければならない。映画やコンサートは行けなくなり、親族の葬儀も参列できなかった。「普通の暮らしを返してほしい」と嘆く。
市販の柔軟剤や合成洗剤などに含まれる香りで、体調を崩す「香害」。報道部の近藤洋平副部長が、症状に苦しむ人々の訴えに耳を傾けた。「きつい香りが苦手」との意見にはすぐに同意できた。しかし、日常生活や文化活動、冠婚葬祭にまで支障を来す被害の深刻さを知り、「当事者が自由に生きる権利が侵害されている」と考えた。
偶然にも、普段から無添加の石けんで洗濯した衣服を着用していた。社内で他にそのような記者はおらず、「多くの当事者と対面取材できる数少ない記者だった」と話す。
連載では、多様な手法で香害の問題を発信する当事者らの活動に着目した。23年から全国を巡回する啓発パネル展を取材。パネルを製作した女性は、約10年前から柔軟剤などの香りに苦しんでいた。隣家の住民に使用自粛を求めたところ、「うちがくさいというのか」と怒鳴り込んできた。「売っているものを使うなっていうのは無理や」とも言われた。展示のメインテーマに掲げられたのは「悪意なき汚染」。消費者が無意識のうちに香害の被害者を増やしている可能性があると報じた。
「香害は誰もが加害者にも被害者にもなり得る社会問題だ」と近藤氏。発症のメカニズムが未解明で、発生源とされる化学物質の規制には至らず、解決への糸口は見えないという。こうした中、まずは実態を周知し当事者への理解を広めることが重要だと捉える。その上で、「何気なく使ってきた洗剤や柔軟剤の使用について考えてもらうきっかけにしたい」と語った。(直)
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