2017年 9月5日
首相の姿勢問いただす

人心一新だけでは不信拭えぬ

 安倍晋三首相は内閣改造・自民党役員人事を行い、第3次安倍・第3次改造内閣が8月3日、発足した。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、二階俊博幹事長という政権の骨格は維持し、閣僚経験者7人を再入閣させる一方、初入閣は第2次安倍内閣発足以降の改造で最少の6人にとどめ、実務能力重視の布陣とした。各紙の社説は首相の政治姿勢を問いただす論調が目立った。

民意と謙虚に向き合え

 首相は改造後の記者会見で、学校法人「加計学園」を巡る問題などで国民の不信を招いたと陳謝し、経済最優先でデフレ脱却を目指す方針を表明した。毎日は「首相と距離を置いてきた野田聖子氏を総務相に起用するなど、これまでと違った姿を強調しようとしたのは確かだろう。『お友達内閣』批判に配慮し、挙党態勢作りを目指した点も認めていい」と評したうえで「首相は記者会見で、まず『おわびと反省』を口にしたが、自身の政治姿勢や、取り組む政策の優先順位を、目に見える形で転換しないと国民の信頼は簡単には戻らない」と強調した。

 中国は「失敗はもはや許されず、リスクを避けて実務能力優先で人選したのだろう。そんな守りの姿勢に強い危機感がうかがえる」と、首相の危機感を読み解いた。読売は「かつてない逆風の中での再出発である。『人心一新』によって、国民の不信感を払拭(ふっしょく)するという安易な期待は禁物だ。様々な政策を前に進めて着実に結果を出す。それが信頼回復を図る唯一の道である」。また、「7月2日の東京都議選での自民党大敗を機に、『安倍1強』の驕(おご)りや緩みへの批判が高まり、内閣支持率を低下させるという『負の連鎖』が続いている。新たな体制で反転攻勢できるかどうかが、安倍政権の将来を左右しよう」と論じた。

 朝日は「忘れてならないのは、政権失速の最大の原因がほかならぬ首相にあるということだ。朝日新聞の7月の世論調査では、首相の最近の発言や振るまいについて61%が『信用できない』と答えた」と指摘。さらに、「辞任した稲田元防衛相を国会の閉会中審査に出席させようとしない姿勢は、身内に甘く、都合の悪い情報を隠そうとする政権の体質がまったく変わっていない現実を露呈している。政権の強権姿勢と隠蔽(いんぺい)体質を正せるかどうか。改造内閣が問われるのはそこである」と主張した。神戸も「『加計学園』の獣医学部新設問題で野党に追及された文部科学相の松野博一氏と地方創生担当相の山本幸三氏は、閣外に出た。自衛隊の日報隠蔽で関与が疑われた稲田朋美氏は、改造の前に防衛相を辞任している。閣僚の交代で幕引きを図る意図があるのなら、『疑惑隠し』の批判は免れない」と疑義を呈した。

 このほか、河北「内閣改造が政権浮揚につながるかどうかは、ひとえに安倍首相自身の政治姿勢に懸かっているのではないか」、北海道「慢心やおごりを排し、民意と謙虚に向き合えるのか」、福井「問われるのは首相自らの『1強』体質であることを肝に銘じるべきだ」、信濃毎日「反対意見に耳を貸さない強権的な国会運営や、疑問に正面から答えない不誠実な対応を改めなければ、不信感は拭えない」、西日本「国民も国会も納得できる説明責任を果たすことが信頼回復の第一歩と心得てほしい」など、首相への注文が相次いだ。

経済再生の道筋示せ

 「先の通常国会ではアベノミクスの評価や北朝鮮の脅威にどう向き合うかという重要な政策論争がかすみ、森友、加計両学園の問題をはじめ閣僚の資質や問題発言にばかり焦点があたった」との見方を示したのは日経だ。「社会保障費の伸びを抑えながら、巨額にのぼる国の借金を減らし、財政健全化を進める必要がある。高齢者への給付抑制や消費税率上げなど負担増の議論から逃げるべきではない。真の経済再生とは、中長期的に持続可能な経済成長の道筋をしっかり示し、その歩みを着実に進めることだ」と、将来世代もにらんだ経済改革の必要性を説いた。

 首相は会見で、2020年施行を目指す憲法改正については自民党主導で議論を進める考えを示した。産経は「この際、念を押しておきたいのは、憲政史上、初めてとなる憲法改正の歩みに決してブレーキをかけてはならないことである」と訴えたうえで、「首相の決意を改めて問いたい。首相と自民党は、改正案の策定や有権者との積極的な対話を通じ、改正への機運を高めてほしい」と求めた。一方、中日・東京は「憲法に基づく野党側の臨時国会召集の要求は無視し続ける」などの姿勢を批判し、「憲法や民主主義の手続きを軽んじる政治姿勢を改めない限り、国民の信頼回復は望めまい。憲法改正論議自体は否定しないが、国民から遊離した拙速な議論は避けるべきだ」とくぎを刺した。(審査室)

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