2018年 4月3日
民主主義揺るがす暴挙

安倍政権の責任を追及

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省が3月12日、公文書の改ざんを認めた。昨年2月に8億円あまりの値引きが発覚した後、近畿財務局が作成した決裁文書を国会議員に開示するにあたり、学園側との交渉経緯など14件の決裁文書を改ざんした。各紙は「あってはならない」「民主主義を揺るがす行為」と一斉に厳しく非難。誰が何のためにやったのか、どのような指示があったのか全容解明を求めた。同時に麻生財務相や安倍首相の責任も追及した。

背景に1強のおごり

 今回の決裁文書改ざんについて、下野、岐阜、山陰中央、佐賀などは「決裁文書のような行政文書などは、公文書管理法によって『国民共有の知的資源』と位置付けられ、将来にわたり国による政策決定過程の検証を可能にするため、保存や管理が義務付けられている。時の政権の都合で改ざんされたり、廃棄されたりしては、民主主義を支える国民の知る権利が大きく損なわれる。あってはならないことだ」と断罪。京都も「国会には、国民の負託を受け行政をチェックする役割がある。行政が偽文書を出せば、それは果たせない。国会を冒涜(ぼうとく)し、民主主義の根幹を揺るがす行為だ」と批判した。

 北海道は「公文書変造罪や虚偽公文書作成罪に当たる可能性も指摘される。麻生氏の責任はきわめて重い」と刑事事件への発展も言及した。

 改ざんが起きた背景として、朝日は「5年余に及ぶ『安倍1強政治』が生んだおごりや緩みと、無縁ではあるまい」と分析。昨年2月の国会審議で首相が「(売却に)私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」と語ったことに触れ「その後、佐川理財局長が売却をめぐる学園との交渉記録はないとする答弁を重ね、それに沿う形で公文書が大幅に改ざんされた」と経緯を解説した。

 愛媛は「首相は4年前に内閣人事局を発足させた。省庁の審議官以上の人事を一元化させたことで、各省庁が官邸の顔色ばかり見るようになったことが遠因ともされる」と指摘。静岡は「官邸主導の政策決定は迅速化し、効果をもたらした一方で、官邸の意向を事前に推し量る官僚側の忖度(そんたく)を指摘する声もある」と制度の弊害に言及した。

 改ざんにあたり財務省は、学園側との交渉に関する記載や、安倍首相と妻昭恵氏をはじめとする政治家の名前、「本件の特殊性」「特例的な内容」などの文言を削除していた。毎日は、注目点は昭恵氏とのかかわりだと指摘した。原本に残されていた森友学園の籠池泰典前理事長の発言を紹介。「昭恵氏とともに撮影した写真を見せながら、昭恵氏から『いい土地ですから(交渉を)前に進めてください』との言葉をもらったというくだりだ。それをなぜ削除したのか。学園と昭恵氏との関係を国会で追及されたくなかったからではないか。疑惑の核心につながる話だろう」と強調した。

 読売は「書き換え前の文書には、自民党の鴻池祥肇・元防災相の秘書が近畿財務局に問い合わせていたことや、平沼赳夫・元経済産業相の秘書が土地の貸付料を高額だと指摘していたことが記されていた。野党は政治家の働きかけが値引きにつながったのではないか、と問題視している」と指摘した。

指示か忖度か 究明を

 日経は、今回に限らず「安倍政権では南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣した自衛隊の日報の隠蔽が昨年春に明らかになり、当時の稲田朋美防衛相が引責辞任した。加計学園の獣医学部新設では文部科学省の内部文書の扱い、裁量労働制をめぐる不適切データ引用では厚生労働省の情報管理が問題となった」と列挙し、公文書管理や情報公開制度の趣旨を歪める不祥事の続出を批判した。

 安倍政権の責任について中日・東京は「国権の最高機関であり全国民の代表である国会を欺いた責任は極めて重く、財務省にとどまらず佐川氏の答弁を許容していた内閣全体に及ぶのは当然だ。そもそも改ざんを麻生氏や政権中枢は知らなかったのか。いずれにしても行政の最高責任者は安倍氏である」と追及。産経は国益の観点から「日本は、北朝鮮危機という国難に直面している。そのときに政権が国民の信頼を失うことが、いかに政策遂行の妨げとなるか。安倍首相には、重大な失政と認識して対処してもらいたい」と注文した。

 西日本は「首相や政権幹部から何らかの指示や要請は本当になかったのか。『1強政権』に官僚組織は忖度をしたのか。こうなると、麻生財務相だけでなく、安倍政権そのものの説明責任と監督責任も問われよう。行政府から欺かれた立法府という観点から見れば、この重大問題に与党と野党の区別はない。国会は国政調査権を駆使して疑惑の徹底究明に動くべきである」と訴えた。(審査室)

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