7月 3日付 非核化の道筋見えず

東アジア安保に新局面

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が6月12日、シンガポールで史上初の米朝首脳会談に臨んだ。各紙の社説は、米国が北朝鮮に体制の安全を保証し、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化を確約する共同声明に対する評価を中心に展開した。

批判的論調相次ぐ

 声明に非核化の具体的なプロセスの記載がなく、特に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の文言がなかったことへの厳しい論調が相次いだ。CVIDを金委員長に最低限約束させるべきことと位置付けた産経は、北朝鮮の政策転換は金委員長に直接、約束させるのが有効だと指摘。「その絶好の機会だったのに生かすことができなかった」と書いた。熊本日日は「地道に事前折衝を積み上げる外交慣例を無視し、『気合』重視の交渉」とトランプ外交を評し、「時間稼ぎを許した過去の政権と同じ失敗を繰り返すのでは、との懸念は消えない」とした。

 河北は「北朝鮮が最も欲していた『体制保証』をあっさり与えた。北朝鮮がほとんど何の行動も起こしていないのにだ」とし、米韓合同軍事演習の中止意向にも触れて「あまりに北朝鮮寄りだ」と批判した。会談を「大きな賭けに近い実験と言わざるを得ない」と位置付けた朝日は「失敗に終われば、回復困難な禍根を将来にわたって残すだろう」としたうえで、軍事演習見直し示唆を「北朝鮮にとって大きな成果だろう」と分析した。中日・東京は「正恩氏は、北朝鮮に理解を示す中国を後ろ盾に、段階的に核放棄する従来の姿勢を譲らなかったようだ」と見立て、「完全な核放棄の実現前に、体制の保証を与えることを約束するものであり、北朝鮮にとって満足できる内容になったのではないか」との見解を示した。

 一方、「評価を決めるのは早すぎる」と慎重姿勢を示した岩手日報。「合意の最大の障害は『疑心暗鬼』」とし、「会談を通じて『一定の信頼を醸成した』とトランプ氏は語った。何度も裏切られてきただけに、不安はあるがその言葉に光明を見いだすべきだ」と書いた。西日本も「両首脳が直接対話して信頼関係を醸成したことは、素直に歓迎したい」「今回つなげた首脳同士の回路を、今後の非核化に生かすべきである」と書いた。

 読売は「評価と批判が相半ばする結果だ」とし、非核化のプロセスやCVIDの道筋が示されなかったことや、弾道ミサイル問題が盛り込まれていない声明を不十分としながら「トップ交渉で一気に事態を打開するのには時間が足りなかったのだろう」と記した。

 段階的非核化が北朝鮮のペースにはまることを警戒する北日本は「非核化プロセスは両首脳のリーダーシップで早期に決めるべきである」としたうえで「合意と履行は全く別物であるということを肝に銘じ、非核化が完了するまで連携して圧力をかけ続ける必要がある」と国際社会に求めた。

 朝鮮戦争の終結宣言観測もあったが声明には触れられなかった。その理由を中国は「トランプ氏も金氏も意欲を示していたが、非核化を優先したのだろう」とみる。福井は「(朝鮮戦争の終結宣言が)結ばれれば、北朝鮮は在韓米軍の撤退を求めてくる可能性も否定できず、米側が言質を与えなかったとの見方もできる」と分析。長崎は、終結宣言がなかったことから、体制保証については「具体性には欠ける」としたうえで、「段階的な非核化」を主張する北朝鮮に「真に平和と安全を求めるのならば、より具体的で積極的な行動を自ら示す必要がある」と提案した。

 京都は、戦争が終結すれば「日本を取り巻く安全保障の現状は大きく変化することも予想される」とし、「米朝が『緊張状態と敵対関係の克服』にふれたことは、東アジアの安全保障に新しい局面をもたらしたといえる」「新たな発想に立った安全保障体制を構想する必要もあるのでは」と指摘した。

経済支援切り札に

 今後については、拉致問題を含め日本の対応を巡る論調が目立った。日経は「いずれ、北朝鮮への経済支援が焦点に浮上する。日朝間には『過去の清算』の問題も横たわっており、経済支援は日本の数少ないカードだ」とし、政府は早晩巡ってくる機会を逃さず最大限生かすべきだと注文。毎日は「日本の最大のテコは経済協力だが、北朝鮮にはかつてほど魅力的でないのが現実だ。中国の経済的影響力が増したうえ、韓国も大規模な支援に踏み出そうとしている。以前より困難な交渉になるだろう」と警鐘を鳴らした。

 信濃毎日は北朝鮮の人権問題を指摘。「人権弾圧に目をつぶったまま、国際社会が金政権を承認することはできないはずだ」とし「拉致問題にとどまらず、人権侵害を改めることが国際包囲網を解く鍵になると説くべきだ」と日本政府に注文した。(審査室)

ページの先頭へ