労使双方に意識改革促す

導入ありきの高プロに懸念

 働き方改革関連法が6月29日、成立した。残業時間の罰則付き上限規制、同一労働同一賃金の推進、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度の創設が柱だ。長時間労働に依存する労働慣行は転換点を迎えた。各紙の社説は、関連法の意義や課題、懸念など、さまざまな視点で論じた。

能力引き出せる環境を

 日経は「日本の生産性や成長力を高める改革の前進を歓迎したい」と評価し、「個人が能力を発揮しやすい環境をつくることで、生産性の向上が見込める。長時間労働の是正は女性や高齢者の就業意欲を高める効果も期待でき、労働力不足を和らげることにもつながろう」と期待を込めた。読売は「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し、多様な人材が能力を発揮して活躍できる環境を整える。その契機としたい」とした上で、「1947年の労働基準法制定以来の大改革だ。正社員との格差が大きい非正規労働者の処遇も改善する。長年の懸案解決に道筋をつけた意義は極めて大きい」と強調した。

 毎日は「雇用の状況や人々の価値観が大きく変わる中での制度改革だ。時代に合わせて、多様な働き方を実現していかねばならない」として、「労使ともに意識を変える時だ。柔軟な働き方を広げていくには、時代のニーズに合った知識やスキルを個々の労働者が身につけられるよう、大学など高等教育や公的職業訓練を充実させないといけない。中高年の労働者も含めて、社会全体でバックアップしていくべきである」と論じた。

 国会論戦で焦点となったのは高プロの是非だった。

 福井は「労働者側のメリットも全く考えられないわけではない。出退勤時間を自由にできる可能性があり、効率よく成果を上げれば時短につながるケースも考えられる」とする一方、「常に効率よく成果を上げられるかといえば、そうでないことも多々あるはずで、その場合、必然的に長時間労働になるだろう」とも論じた。ほかにも、「最大の問題は残業の概念がなく、長時間労働を助長する懸念があることだ」(信濃毎日)、「『望まない人には本当に適用されないのか』『対象が無原則に拡大されないか』など疑問や懸念が拭えない」(西日本)といった懸念が相次いだ。

 河北は、政府が高プロにこだわるのは経済界の期待が高いからだと指摘。「『裁量労働制の対象拡大』は調査データのミスが見つかり、法案提出前に削除に追い込まれた。せめて高プロ制度を創設しないと面目が立たない」との見方を示した。

 残業時間の上限規制については、北國が「人手不足に悩む地方の中小・零細企業の経営に深刻な影響を及ぼす懸念」を挙げ、北海道は、繁忙期に月100時間未満まで残業が認められたことなどに「過労死が労災認定される目安と同じだ」「死ぬ寸前まで働かせてもいいと、法律でお墨付きを与えるようなものではないか」と疑問を呈した。産経は「残業時間に罰則付きで上限を設ける意義は大きい」と評価した上で、「残業が減ればその分、収入は減少する」として、「浮いた人件費を従業員に再配分する仕組みが求められる。ボーナスによる還元などの制度設計を急ぐべきだ」と提言した。

運用監視が肝要

 法案作成や国会審議を巡る問題点を指摘する論調も目立った。

 朝日は「47項目もの参院での付帯決議が、何よりこの法律の不備を物語る。本来なら、議論を尽くして必要な修正を加えるべきだった」と断じ、「国会審議で浮き彫りになったのは、不誠実としか言いようのない政府の姿勢だ。比較できないデータをもとに、首相が『裁量労働制で働く方の労働時間は一般労働者よりも短い』と誤った説明をし、撤回に追い込まれた。その後も、法案作りの参考にした労働実態調査のデータに誤りが次々と見つかった」と主張した。

 岩手、新潟、南日本、沖タイなど複数紙が、厚生労働省が制度導入の根拠とした調査の経緯に言及した。「聞き取ったのは12人で、制度設計前に実施したのは1人だけ。『制度導入ありき』が見え見えではないか」(南日本)などだ。中日・東京は「批判されにくい政策を掲げる陰で、過労死を生むような高プロと裁量労働制の対象拡大を滑り込ませる手法は姑息(こそく)である」「首相は、高プロを批判する過労死の遺族との面会を拒み続けている。一方で、国会では数の力で法案成立を強行する。政策の責任者として不誠実ではないか」と批判。京都は「党利党略の駆け引きが優先され、『働き方』をめぐる本質的な議論が深められたとは言い難い」と説き、「働く人の立場を守るため、運用の在り方を監視しなければならない」「労働者保護に目を向け続けるのも、国会の重要な役割である」と締めくくった。(審査室)

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