2018年 11月6日
麻生氏留任に疑問符

文書改ざんのけじめどこへ

 第4次安倍改造内閣がスタートした。安倍政権としては過去最多の12人が初入閣。菅義偉官房長官や麻生太郎副総理兼財務相ら主要閣僚を留任させ、政権の骨格を維持したが、森友学園問題の責任者である麻生氏の留任についてはけじめが付いていないと指摘する論調が目立った。各紙は、最後の任期3年間で安倍首相が取り組むべき課題は山積しているとし、謙虚で丁寧な政治姿勢を求め、社会保障政策など国民の暮らしに直結する政策を優先して遂行するよう訴えた。

「国民の信」軽視

 麻生氏の留任について中日・東京は「麻生氏は、森友学園を巡る決裁文書の改ざんや、事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑を巡り、財務省のトップとしての責任を取るべき立場にある」とし続投に疑問を呈した。その上で「首相が一連の政権不祥事を軽視しているとしか思えない。自らの任命責任を回避するために、閣僚の責任をあえて問わないのだろうか」と論じた。

 朝日は「首相は、森友問題の真相解明に陣頭指揮をとるでもなく、組織ぐるみの公文書改ざんの政治責任に背を向ける麻生太郎副総理兼財務相の続投を決めた。『謙虚に丁寧に』と繰り返す首相の言葉の本気度を疑う」と指摘した。

 西日本は「何よりも国民から見て不可解なのは、麻生氏の留任である」とした上で「加計学園問題と併せ、首相周辺で相次ぐ疑惑や不信の解消を本気で目指すのなら、改造人事で政治的なけじめをつけるべきではなかったか」と論じた。

 高知は「今後の政権運営に欠かせない『国民の信』を軽く見ていないか危惧する。麻生副総理兼財務相の留任がそれを象徴するのではないか」と指摘した。

 日経は改造内閣について「政権の骨格である側近グループを留め置く一方、自民党の各派閥の要望を大幅に取り入れ、党内力学に目配りした布陣となった」と分析。自民党総裁選で首相と争った石破茂元幹事長陣営の若手の閣僚起用などにも触れ、「重要なのは、こうした融和路線を形だけに終わらせないことだ。『和の政治』を心がけることで、政策本位の政権運営を推し進めてもらいたい」と求めた。

 毎日は「今回の人事からは、首相が新たな総裁任期の3年間で何を成し遂げたいのかが見えてこない」とした上で「首相は(略)記者会見で『全員野球内閣』と銘打ったが、長期的課題を担える布陣なのかは疑問だ」と指摘した。

 愛媛は女性閣僚が1人にとどまった点について「政権が掲げる『女性活躍』は看板倒れであり、早急に人材を育成し、積極的登用を図りたい」と求めた。

 読売は首相の政権運営について「長期政権ゆえの緩みや驕(おご)りが目立つ中、内閣全体が緊張感を保ち、優先順位を付けて政策を遂行することが重要である。その努力を怠れば、内閣は直ちに失速することを、首相は肝に銘じるべきだ」と訴えた。

 デーリー東北は「首相が異論や批判に耳を貸そうとしなかったり、国会で野党を挑発していたずらに対立をあおり、最後は『数の力』で押し切ったりするこれまでの政治姿勢を改め『信頼と対話の政治』に転換することがまず求められよう」と指摘した。

 首相が目指す自民党憲法改正案の臨時国会への提出に関連して信濃毎日は、自民党憲法改正推進本部長に下村博文元文科相、党総務会長に加藤勝信前厚労相と首相の側近を起用した点に触れ、「首相の意向のままに党内の議論が進められないか、注視しなければならない」と指摘。さらに「世論調査で期待する政策として改憲を挙げる人は少ない」とした上で「前のめりの姿勢は改めるべきではないか」と論じた。

まず社会保障改革

 産経は首相が残りの任期で実行するとしている社会保障制度改革について「まずは、首相自らが改革の全体像を示す必要がある。新設された全世代型社会保障改革担当相の茂木敏充氏の下で、包括的な政策を検討してもらいたい」と指摘。さらに高齢者数がピークとなる2040年代初頭をにらんだ改革にも言及し、「長期政権だからこそ、人口激減を前提とした『新たな国のかたち』も提示してもらいたい」と求めた。

 秋田魁、京都、山陽などは改造内閣が優先して取り組むべき政策に年金、医療、介護といった社会保障政策、景気や雇用などの経済政策を挙げた。

 岩手日報は「来年の消費税増税に耐える経済状況をつくる。社会保障を持続可能にして、人口減を止めるために豊かな地方をつくる。首相の残り任期に国民が望むことだろう」と訴えた上で「『地方』の視線を恐れなければならない」と強調した。(審査室)

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