2018年 12月4日
底知れぬ社会の分断見る

融和への転換図れ

 米中間選挙は、大方のメディアの予想にたがわず、下院で民主党、上院で共和党が過半数を占め、「ねじれ」が生じる結果となった。この結果から米社会の何を読み解くのか。トランプ政権の行方はどうなるのか。日本は今後、どのように米国と向き合えばいいのか。各紙はこれらの点を社説で論じた。

 選挙戦について河北は「分断と対立が深まる米国社会の不確実な姿を、そのまま映す結果になった」とした。中日・東京も「より鮮明になったのは、社会分断の底知れない深さである。共和党はより保守化し、民主党は一層リベラルに傾いた」と分析。朝日は「異様な選挙だった。(略)全国民を代表するはずの大統領が、敵と味方に国を裂く張本人だった」と書いた。一方、「4年ごとの大統領選挙のはざまに実施される中間選挙で近年、今回ほど盛り上がった選挙は珍しい。投票率が前回よりも大幅にアップした」とデーリー東北は指摘した。

若者、女性が「NO」

 トランプ政権にとって厳しい結果だと多くの新聞が見立てた。山梨日日、長崎などは「分断を深める統治スタイルに多くの国民がノーを突きつけた」と総括した。山口は「事実上『トランプ大統領に対する国民投票』だった米中間選挙で、厳しい審判が下った」と断じた。

 半面、日経は「全体としてみると、共和党地盤におけるトランプ人気の根強さを印象付けたといってよい。本人はツイッターで『今夜は大成功だ』とつぶやいたが、本音だろう」と分析。また、琉球は「多くのスキャンダルを抱えながらも世論調査で一定程度の支持率を維持している点は、日本の政権とも共通する」と指摘した。

 中国は「『トランプ流』にNOを突きつける力となったのは、若い世代だ。米メディアの調査では、今回、若者の3分の2以上が民主党に投票したという」と分析した。沖タイは民主党の下院奪還について「原動力となったのは女性たちの怒りだ。『ピンクウエーブ(女性の波)』と呼ばれ、女性議員は過去最多の選出となった」とした。

 今後のトランプ政権について、熊本日日は「強硬な政権運営が失速し、機能不全になる恐れもある」との見方を示した。「排他的な言動や『自国第一主義』の考え方を引っ込めるようなトランプ氏ではあるまい」と京都。神戸は「再選を目指して支持者にアピールするため、一層の強硬策に打って出るのではないかという分析は否定できない」とした。産経は「留意すべきは、トランプ政権が議会の拘束を受けない外交・安全保障の動きを活発化させるであろうということだ」と分析。毎日は「特に心配なのが北朝鮮への対応だ。中間選挙の結果を見て北朝鮮が対米姿勢を微妙に変えることも予想される。場当たり的とも言われるトランプ氏は、くれぐれも軽はずみな対応をしないでほしい」と注文した。

 トランプ氏に方向転換を促す社説も目立った。北海道は「自身への信任投票とも言える選挙結果を真剣に受け止め、分断から融和に向かう転機とすべきだ」と主張した。「人種や性別、宗教を問わず、国民の権利を守る立場にある重責を、トランプ氏は再認識してほしい」と求めたのは信濃毎日。山陽は「対立する意見に耳を貸さず、ツイッターで罵倒する大統領にあるまじき態度に変化がみられ、民主主義の危機と社会の分断を修復する『転換点』になることを望みたい」とした。秋田魁は「議会が本来の機能を果たしてトランプ氏の独善的な政策を食い止め、経済発展や世界秩序の安定など国際社会をリードしてきた米国の信頼回復を図ることが肝要だ」と指摘した。

通商への影響注視

 国際社会はトランプ政権にどう向き合うか。読売は「日本は、トランプ政権の出方を注視しながら、同盟関係の堅持と、日米双方の利益となる通商関係の構築を図らねばならない」とした。南日本は「平和主義や自由貿易の重要性など、日本は原則を堅持して米国と向き合う必要がある」と注文。愛媛は「日本政府は『今後も米政権と連携する』と強調するが、同盟国に追従するだけでは国益を損ない、国際社会の信頼を失うことになりかねない。多国間の対話と協調により、冷静かつしたたかに向き合う必要がある」とした。

 多くの新聞が通商関係について触れた。「自由経済圏の拡大を目指す日本としては日米物品貿易協定(TAG)の協議を進める中で、米国に環太平洋連携協定(TPP)の枠に戻るよう粘り強く訴えていく必要がある」と静岡は指摘。岩手日報は「大幅な農産品の市場開放や、国の手足を縛られる『為替条項』などは毅然(きぜん)と押し返すべきだ」と書いた。日本農業は「これ以上の市場開放は許せるものではない。保護主義を強めるトランプ政権を相手に、どのようにして日本の国益を守り抜くのか。安倍政権の力量も問われる」とした。 (審査室)

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