新時代の礎は民主主義再生

人口減社会に向き合う

 今年は新しい時代が始まる節目の年であることから、地方紙の元日付社説は、東西冷戦の終結、バブル経済の崩壊、阪神大震災や東日本大震災といった災害など平成の30年に起きた国内外の出来事を踏まえ、未来を展望したものが多くみられた。

 徳島はまず、「平成という時代に得た教訓を生かし、平和と自由、民主主義の理念を引き継いでいく決意を新たにしたい」と強調。その上で、この時代を振り返り、「冷戦を象徴していたベルリンの壁が崩壊し、希望の灯がともったようにみえた。しかし、グローバル化による負の側面が顕在化し、各地で紛争やテロは絶えない」と指摘した。岐阜も「自由、民主主義、平等、法の支配、国際協調といった、これまで信じてきた価値観が大きく揺らぎ、『自国第一主義』がまかり通る」と嘆息した。

将来世代の声を政策に

 中国はこうした状況の中、民主主義の再生に着目し、「メディアの多様化、複合化、グローバル化の渦中で、民主主義をどう鍛え直すか。私たちは突き詰めていきたい」と訴えた。米国で過去に2大政党の極端な二極化を抑えてきた「寛容」「自制」といった規範が民主主義の「柔らかいガードレール」として機能してきたことを米研究者の著作から引き、「柔らかいガードレールが危ういのは日本も同じではないか」と指摘。安倍政権に対し、かつての保守政治家が持っていた「規範」、「誠意」を示すよう求めた。

 今年は統一地方選と参院選が行われる。複数紙が足元の民主主義に着目し、地方自治や選挙を通じた政治参加の重要性を説いた。上毛は「民主主義の根幹となる選挙こそ、県民の無関心の広がりを象徴しているのではないだろうか。それが顕著に表れているのが投票率の低迷であり、議員のなり手不足だろう」と警鐘を鳴らした。神奈川は「どんな政治を望むのか。それを具現化するのは私たちの意志にほかなりません。社会が閉塞感(へいそくかん)に覆われているのであれば打ち破るのも私たちです」と訴え掛けた。

 新時代を迎えるのに合わせ、将来世代を踏まえた意思決定や将来世代の視点で未来像を考える「フューチャー・デザイン」について触れた新聞が複数あった。北海道は「市町村、都道府県、国、世界がそれぞれ、あるべき将来を『将来世代』になりきって考える。その上で『仮想将来世代』と現役世代が真摯(しんし)に話し合い、これからの道筋を模索する。そうした発想が必要な時代だ」と主張。京都は「未来に生きる人の視点を現在の政策に投影させる仕組みの実現に一定の社会的合意が得られれば、持続可能な社会づくりへの一歩につながるかもしれない」と期待を示した。福島民友は「未来を『他人ごと』ではなく『自分ごと』として捉え、最善策を導き出す方法である。長期的な課題を数多く抱える本県においても、より有効な政策や施策を作るために応用できるだろう」と提案した。

 人口減社会については、危機感を示した新聞と、むしろ前向きに向き合おうと主張する新聞があった。新潟は、「人口減社会に立ち向かう」との見出しで、「労働力不足が深刻化する。農地が荒れ、空き家が増える。まちの機能を維持できない。そうした事態が現実になるかもしれない」と指摘。その上で、「県民一人一人が人口減少を自分自身の問題と捉える時だ。地域の暮らしを守るために、官民で知恵を結集しなければならない」と呼び掛けた。

 山陽は「東京もこの先、急激な高齢化が進む。地方と大都市がともに生きる道を真剣に探る必要があろう」と警鐘を鳴らし、居住はしていないが、物産品の購入やイベント参加、災害時のボランティア活動などを通じて地域にかかわりを持つ人たち「関係人口」のネットワークが「ますます貴重になる」とした。

 これら2紙とはやや異なった視点で、楽観論を提示したのは河北だ。「人口増加が単純に国民の幸福につながるのかという疑問をまず提起したい。人口減少で地方そのものが消滅するわけではない。人口規模に合わせて市町村の合併が進み、行政の効率化が図られる。解決できる問題ばかりだ」とした。車の自動運転による交通問題の解消、テレワーク、人工知能(AI)による労働力の代替―といった近い将来の科学技術の進展を見据え、「地方にはいろんなチャンスがある」と強調した。

 天皇の代替わりに当たり、改元の意味などに触れた新聞も複数ある。北國は「四季があるからこそ俳句や短歌、年中行事が生まれたように、歴代の天皇は改元により、『人心一新』を図り、重層的で起伏に富んだ歴史を築いてきた。もし元号がなく、西暦だけだったとしたら、どんなに味気ないことか」と肯定的に捉えた。静岡は「元号は時代を映す象徴。新元号が、すべての国民に愛される時代にしていきたい」とした。

 高知はややショッキングに、「天皇の代替わりや改元は日本特有の事情だ。それによって不規則に時代を区分すれば、歴史の大きな流れを見誤る恐れもあるかもしれない」とした。ただ、これは元号を否定したものではない。視野を日本という小さな枠内にとどめるのではなく、もっと世界に目を向けるべきであるとの主張の「前振り」だ。時代が昭和から平成に変わる直前の1988年12月、ソ連のゴルバチョフ共産党書記長が国連で行った「共に行動することによってのみ、その目標を達成できる」と世界の協調を訴えた演説を引きながら、「世界を融和と協調の流れに向かわせたい」と訴えた。

地元軽視の安保政策懸念

 在日米軍基地や安全保障絡みの課題を抱える地域の各紙は、日本政府への批判や地元の懸念に紙幅を割いた。佐賀は「佐賀に陸自のオスプレイが配備されれば、将来的に米軍機もオスプレイの修理、補給拠点として利用するのではないかという不安はどうしても残る。日米の軍事的な結びつきは、もはや佐賀にとって無関係とはいえない。そうした意味で2019年は国際的な動向をこれまで以上に凝視していくことが求められる1年になりそうだ」と指摘した。

 沖縄の2紙はいずれも、政府が昨年12月、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古で埋め立て予定区域への土砂投入を開始したことを批判した。琉球が「辺野古での新基地建設の強行は、日本から切り離された1952年のサンフランシスコ講和条約発効、県民の意に反し広大な米軍基地が残った日本復帰に続く、第4の『琉球処分』にほかならない」と断じ、「政府に問いたい。日本の民主主義はみせかけなのか」と迫った。沖タイは「新基地建設を急ぐ理由はない。工事を止めた上で、国会で新基地に絞った集中審議することを求めたい」と注文を付けた。地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の配備候補地の一つとなっている秋田県の秋田魁は「配備について、政府は『地元理解を得ていることが前提』と話すが、辺野古のやり方をみていると素直には信じられない」と疑問を呈した。

ニュース35紙、企画・連載41紙

 【1面トップ】35紙がニュース、27紙が企画、14紙が連載でスタートした。ニュースと連載の主な見出しを拾う。

 《ニュース》北海道「電力消費多いデータセンター、再生エネ100%石狩で自給 京セラ子会社」、神奈川「あざみ野―新百合延伸へ 横浜市営地下鉄」、北陸中日「市町村の7割超外注 地方創成の計画作り 専門機関が全国調査」、西日本「人口減、災害 都市再生へ一手 斜面宅地、居住制限へ 北九州市」、沖タイ「沖縄歌謡最古の音源 京都の大谷大、蝋管レコードに残る」

 《1面連載》静岡「サクラエビ異変 第1章母なる富士川」、新潟「上を向いて歩こう 人口減少社会 第1部粟島編」、北日本「富山進化論 平成のその先へ 第1章大合併」、北國「繊維王国いしかわ今は プロローグ」、京都「彩りの時代―多様性を求めて」、南日本「開国新時代かごしま 第一部 隣人の素顔」、琉球「沖縄フェイクを追う―ネットに潜む闇」(審査室)

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