政権基盤の安定を維持

安保政策 地元はNO

 7月21日に投開票された第25回参院選は、自民、公明の与党が改選過半数の議席を獲得した。安倍晋三首相は引き続き安定した政権基盤を手に入れたが、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の勢力を保つことはできなかった。各紙の社説は「6年半に及ぶ長期政権に対し、有権者は一応の支持を与えた」(毎日)などとしつつ、年金・医療をはじめとする社会保障制度の改革、日米貿易交渉、中東のホルムズ海峡の船舶の安全を守る「有志連合」への参加問題など政策課題は山積していると論じた。

政策課題は山積

 与党の勝因について、北國は「日本を取り巻く情勢が激動していることも影響した」と指摘。「(米中貿易摩擦やイラン情勢、日韓関係など)不透明感が増しているだけに、政治の転換よりも安定を志向する空気が上回った」と分析した。

 読売は「与党の勝利で、10月から消費税率を10%に引き上げる方針は改めて信任された形だ」としたうえで、「社会保障の持続性を高めるため、給付を抑え、負担を増やす制度改正は避けられない。消費税の再増税も視野に入れねばなるまい」と述べた。朝日も「(首相は)消費税について『今後10年間ぐらいは上げる必要はない』と語ったが、本当にそれで必要な財源をまかなえるのか。説得力のある説明が求められる」と注文を付けた。

 安倍首相が意欲を示す憲法改正について、神奈川は「与党の勝利は有権者が『安定』を選んだ結果だろう。ただし、それが改憲論議を進めることへの信任ではないことは明らかだ」と主張。信濃毎日も「民意は改憲にはないことは世論調査の結果をみても明らかだ」とし、「主権者である国民が求めていないのに、首相の信条に基づく改憲論議を進めることに無理がある」と断じた。

 福井は「改憲勢力が3分の2に届かなかったことで、首相の軌道修正は必至だ。野党に秋波を送り多数派の形成を目指すことも想定される」との考えを示した。

 一方、産経は「憲法改正や外交・安全保障、経済、社会保障などで、日本と国民のため『大きな政治』を前進させてもらいたい」と要望。タンカー護衛の有志連合への参加問題を巡っては「政府与党にとって待ったなしの課題である。参加を決断すべきだ」と唱えた。今後本格化する日米貿易交渉に関して「選挙が終わったからといって国益を損なう安易な譲歩は許されない」とくぎを刺した。

 新潟は「注目したいのは、秋田、沖縄で自民党が敗れたことだ。秋田はイージス・アショア配備計画、沖縄は米軍普天間飛行場移設問題が大きな争点となった。『国策』に対して地元から疑義が示された格好だ」と論評。琉球は「今度こそ、沖縄の声に真剣に耳を傾け、新基地建設断念へと大きくかじを切ってほしい」と求めた。

 山陰中央は「人口減少に苦しむ地方にとって喫緊の課題である地方創生がかすんだ感が否めない」と指摘し、福島民友は「国と地方が固く手を取り合うことのできる実効性ある施策が必要だ」と訴えた。

 日本農業は「れいわ新選組がインターネット交流サイト(SNS)などで注目を集め、足がかりを得た。これは既存政党や今の政治への不信を象徴するものだ」と主張。日経も「向こう受けばかり意識したポピュリズム志向が日本でも広がるのは困る。ただ、その人気を生んだ既成政治への不信感の高まりは無視すべきではない」と警鐘を鳴らした。

危機的な低投票率

 過去2番目に低い投票率について、茨城、下野、上毛、佐賀などは「推計約49%という数字は、もはや民主主義の危機と呼ぶべきレベルである」と強調。岩手日報は「選挙戦が盛り上がりを欠いた原因は、政策の争点化を政権が避けたことにある」と分析した。

 毎日は「参院の選挙制度が複雑なことも低投票率の要因の一つだろう」と問題提起した。今回から比例代表に「特定枠」が設けられたことについて「本来は有権者が投票権を行使しやすくなるように配慮すべきであり、これでは政党側の都合を優先させた制度の変更だ」と批判した。

 高知は「衆参両院で多数派が異なる『ねじれ国会』では、参院が国政を止めるほど強い権限を発揮したこともあった」とし、読売は「衆院での再可決の要件を3分の2から過半数に緩和する改革など、『強すぎる参院』の是正にも取り組まなければならない」と説いた。

 神戸は「この6年半、政府、与党が多弱野党の足元を見て丁寧な議論をしようとせず、数の力で法案成立を強行する国会運営が定着してしまった感がある」と振り返った。北海道は「立法府の形骸化に歯止めをかけるには、政権批判の受け皿を整え、首相の攻撃をはね返す力量を野党が持つことが死活的に重要である」と締めくくった。(審査室)

ページの先頭へ