2019年 9月10日
北東アジア情勢に暗雲

関係改善へ対話の道探れ

 韓国政府は8月23日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決め、通告した。元徴用工問題に端を発した日韓対立が、輸出管理厳格化を巡る通商分野から安全保障協力まで拡大した。各紙は一斉に、韓国の決定は日米韓の結束を揺るがし、北東アジア情勢に悪影響を与えると非難。同時に対抗措置の応酬は不毛な消耗戦だと訴え、日韓双方に冷静な対応を求めた。

狙いは失政隠しか

 協定は機密情報を提供し、また第三国への漏えいを防ぐための枠組み。愛媛はその意義を、日本が「(北朝鮮の核・ミサイルを)近距離で警戒する韓国側の情報提供を受けられる」とともに、韓国側も「日本の偵察衛星が撮影した北朝鮮の精細な画像データを得ることができ、双方にメリットがある」と説明した。日経は、北朝鮮が「短距離弾道ミサイルなどを発射し、命中精度を高める誘導装置などの高性能化を進めている」中で「必要性はむしろ高まっている」と強調。韓国の方に利点が多いと指摘したうえで、「反日のために軍事情報を犠牲にした」と批判した。

 秋田魁は、7月にロシア軍機が竹島周辺の領空を侵犯したことに触れ「韓国軍機が警告射撃する事態にまで発展した。緊張が高まる中で、韓国の協定破棄という判断は、東アジアの安定を揺るがしかねない」と強調した。産経も「日米、米韓同盟の不安定化を望む北朝鮮や中国を喜ばせる愚挙」と断じた。北朝鮮に核・ミサイルを放棄させなければならないのに、協定破棄はそれに逆行すると指摘した。

 読売は破棄に至るまでの文在寅政権の姿勢を論じた。日本が輸出手続き簡略化の優遇対象国から韓国を除外したのは「韓国の貿易管理制度や運用に不十分な点があったため」と説明。「韓国がまず、管理体制の改善を図るべきだろう」と要求した。対話呼び掛けに日本が反応しなかったとの主張にも「文氏は、対立の根幹である韓国人元徴用工の問題について何ら具体策を示していない。理解に苦しむ」と反論した。

 加えて北海道は「(対話呼び掛け演説後の)日韓外相会談に合わせ、韓国側は日本産の加工食品などに対する放射性物質検査を強化すると発表した。それに続く今回の協定破棄である」と一貫しない姿勢を追及した。

 文政権の狙いを福井は「米中貿易摩擦の影響で貿易が落ち込むなど経済の失政を覆い隠すために『反日世論』をあおり、支持率につなげようとの思惑が透ける」とし、「来年4月の総選挙をにらんでのことなら『自分第一』の極み」と訴えた。中日・東京は「大統領周辺に起きていたスキャンダル隠しが狙いとの指摘も出ており、韓国政府にとっては損失の方がはるかに大きい」と分析。8月27日には最側近の娘の不正入学疑惑の本格捜査が始まった。

 北國は「米国を動かすカードとして使っていたふしがうかがえる。米国が困り果てて日本に圧力をかけ、輸出管理強化や旧ホワイト国からの韓国除外をやめさせることができると思っていたとすれば、思い違いも甚だしい」とした。

 米国の反応について中国は「いち早く『文在寅政権の決定に強い懸念を表明する』との声明を発表した。強い表現を使い、名指ししてまで非難するのは極めて異例」「北朝鮮の脅威を過小評価し、融和政策に肩入れする文政権の姿勢への危機感が強い」と考察した。

報復合戦 日本にも責任

 一方、日本側の手続きにも疑問を呈したのは西日本。安全保障上の輸出管理強化を「当初は明らかに元徴用工問題と関連付けて説明していた。韓国の側には『対立構造を最初に拡大したのは日本』と見えているはずだ」とした。

 毎日も「責任の一端は、安倍政権にもある」と指摘し、「外交問題と経済政策を絡めたことは不適切だった。韓国側の強い反発は予想されたはずだ。対立の影響は経済に波及しただけでなく、文化やスポーツ、人的交流にまで及んでいる」と懸念を示した。

 さらに南日本は、「九州や北海道、東北を中心に観光業への打撃が大きい」「韓国人客は7月、前年同月比7・6%減の56万1700人となった。3社で週10便が運航していた鹿児島―ソウル線も一時運休や減便の決定が続く」と、対立長期化の弊害を提起した。

 事態打開に向けて山形、上毛、山梨日日、佐賀などは「両国政府は互いに相手側にボールがあるとの姿勢だ」「だが相手に責任を押し付けるだけでは、負の連鎖は断ち切れない。首脳レベルの対話への道を探るべき時だ」と唱えた。

 朝日は「報復合戦の根本にあるのは徴用工問題であり、この懸案を少しずつでも進展させなければ関係改善は望めない」「両政府は徴用工問題への対応策を落ち着いて話しあうべきだ」と指摘した。(審査室)

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