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2019年 11月12日
多様性の時代 「令和流」期待

宗教色、前例踏襲に疑問も

 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」が10月22日に行われた。この日を中心に、各紙は社説・論説で、令和の時代の天皇と国民の関係について考え、即位に伴う一連の行事を政教分離や国民主権の観点から論じた。皇室の未来に関する幅広い議論を呼び掛けるものも目立った。

豊富な国際経験

 日経は「即位を心からお祝いするとともに、海外から寄せられた祝意に深く感謝したい。今回の慶事を機に国民と皇室の絆が強まり、諸外国との親善と友好もいっそう深まるにちがいない」と論じた。ラグビー・ワールドカップに触れた徳島は「国際化時代を印象付け、令和皇室の活躍の広がりを示唆している。いろいろな国籍の個性豊かな選手が君が代を歌い、桜のジャージーに誇りを持ち死力を尽くした。改めて『日本人とは何か』を考えさせられる」と記した。新潟は「ともに戦後生まれで、留学経験があるなど国際経験豊かな天皇、皇后両陛下が、グローバル社会にふさわしい象徴像をどう描くのか。見守りたい」と期待を込めた。

 読売は「即位の儀式は千数百年前に始まったとされる。陛下は伝統を受け継ぎつつ、国民主権の憲法の下で、国民の幸せを希求する姿勢を改めて示されたと言えよう」と分析。毎日は「陛下は平成の時代を『人々の生活様式や価値観が多様化した』と振り返り、『多様性と寛容の精神』が大切だと述べていた。こうした新しい時代感覚を基にした象徴像が生まれるのかもしれない」と指摘した。

 お言葉について岩手日報は「特に人々の心に響いたのは『国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添う』との部分だろう。『象徴天皇』の道を切り開き、退位した上皇さまの歩みを継承する決意と受け止められる」とした。福井は「お言葉は5月の即位後朝見の儀のものにほぼ沿った形だ。整合性の点からもやむを得なかったのだろうが、新たな模索を感じさせるものが欲しかったとの指摘もある。政府の意向も踏まえる必要もあろうが、ご公務などを通じて『令和流』の新たな象徴天皇像を一歩一歩築いていかれることを願いたい」と求めた。

 産経は「天皇陛下は即位を内外に宣明され、国民の幸せと世界の平和を常に願い、象徴としてのつとめを果たす、ご決意を述べられた。心強いお言葉である。即位をお祝いするとともに、そのお心を国民もしっかり受け止め、令和の歴史を刻んでいきたい」と表明した。

 「昨年7月の西日本豪雨、今回の台風19号による広範な水害など、自然災害の脅威は増すばかりだ。それに対応するさまざまな局面で、陛下の水問題に対する意識の高さと取り組みの成果が広く共有されるよう期待したい」としたのは河北。陸奥は即位礼正殿の儀の後の祝賀パレードが11月に延期されたことについて「被災地の復旧状況を鑑みれば、やむを得ないことだろう」と論じた。

 琉球は恩赦について「行政が、裁判で確定した刑罰の内容を変更させたり、消滅させたりする恩赦は、行政権の司法権への介入、越権ともいえ、権力分立の確立された時代にそぐわない。今後は見直しが必要だ」と主張した。

 一連の儀式について、北海道は「国事行為として行うのであれば、宗教性を排除する必要がある。神話由来の剣璽等を使用するのであれば、皇室行事として行い、公費を支出しないのが筋だろう」と訴えた。中国は「高御座から見下ろす形で即位を宣言し、首相の発声に続いて参列者が万歳三唱した。国民に寄り添う象徴天皇の姿とは隔たりがある」とした上で「戦前回帰と受け止められないように丁寧な説明が必要だ」と強調した。

皇位継承問題議論を

 中日・東京は「皇位継承という伝統の重さは十分に理解する。それでも天皇と神道との接近、あるいは天皇の権威を高める効果がないかも考慮すべきだ。象徴天皇制にふさわしくありたい」と主張。朝日も「政府の事の進め方には大きな疑問がある。開かれた議論を避け、異論には耳をふさいで、多くを『前例踏襲』で押し通そうという姿勢だ」と断じた。信濃毎日は「政府は儀式を円滑に進める名目で議論を実質的に避けた。皇位継承問題に議論が広がり、自民党内や保守派に異論が根強い女性・女系天皇の問題が対象になることを懸念したのではないか」と指摘した。

 皇位継承の問題を多くの新聞が取り上げた。秋田魁は「皇室活動の維持のためには、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる『女性宮家』の創設を含めての議論が必要である」と提起した。東奥、岐阜、佐賀などは「このままでは、10代の悠仁さま1人に皇統存続の重圧がかかることになる」とし、「国民の側も皇室に何を求めるかを含め、考えを巡らせる必要がある」と訴えた。(審査室)

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