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共助で社会の再構築を 地方各紙 コロナ下の元日号

民主主義の揺らぎに危機感

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中で迎えた2021年。地方紙の元日付社説は「新たな日常」で人と人のつながりが制限され、差別や中傷も起きる中でこそ、お互いを支えあう「共助・公助」が必要だと訴えた。在宅勤務の広がりや延期された東京五輪、発生から10年となる東日本大震災などさまざまな角度から今年を展望し、ウィズコロナ時代を乗り越える心構えや生活を論じた。

弱者を取り残さない

 愛媛は、コロナ禍で感染者への中傷や差別が問題となり、「自粛警察」と呼ばれる過剰反応も起きたことに警鐘を鳴らし「物理的な距離が離れている今こそ心と心の結び付きが大切で、多様性を尊重する心や、他者への寛容さを社会に根付かせなければならない」と訴えた。新潟は「ウイルス禍は、『強さ』を求め続けてきた社会の限界と脆弱さをあぶり出した」とし「年齢や性別、仕事にかかわらず、弱い立場の人も安心して生きられる共生社会。ウイルスと共存する時間を、そうした社会を再構築する機会にできないか」と問い掛けた。

 西日本は「一隅を照らす」という言葉に着目。「一人一人が自分の場所で踏ん張り、現在と未来のためにできることをする」ことが「国のあり方を変え、ひずみや不公平を正す力」になると唱えた。

 発想の転換を説いたのは佐賀。コロナ禍という世界規模の課題を解決するには「安易に答えを求めるのではなく、長期的思考が欠かせない」と指摘。「不確実なものに生半可な意味付けや知識で解を見いださない。心もとない宙ぶらりんな状態に耐えた先に、必ず深い発展的な理解が待ち受けていると信じる。そんな持続力がいま必要」と提案した。

 コロナ禍では非正規労働者や学生など若い世代が困窮に追い込まれた。沖タイは「弱い立場にある人が最も大きな影響を受け、取り残されるという、脆弱性を放置しない政治を今こそ実現したい」と訴えた。信濃毎日も「次代を担う世代の暮らしが先に崩れてしまいかねない」と警鐘を鳴らし、若い世代を中心にした「未来を語れる社会」へ転じるよう説いた。

 菅義偉首相は目指す社会像に「自助・共助・公助」を掲げ、まず自助を求める。これに対し福井は「一義的に重要なのは『公助』」と指摘。政府に対し、セーフティーネットの拡充などを進め、ワクチン接種への態勢整備を急ぐよう求めた。同時に個人には「分断や孤立を助長しかねない誹謗中傷を『やめる』『やめさせる』ことも共助と捉える視点」を持つよう呼び掛けた。

 日本海、山陰中央などは「身が凍えるようなムードの下地には、過剰な『自己責任論』がある」と考察。今こそ「個々人の『共助』の精神が必要」で「いまだに残る東日本大震災の被災地の風評被害をなくすことにもつながる」と論じた。

 政府は感染収束と経済再生の両立を狙うが、第3波で医療崩壊も懸念される。秋田魁は「経済再生の前提は、国民一人一人の『命』を守り抜くこと」と指摘。現場の医師・看護師不足への支援は「金銭面だけではもはや追い付かない。医療従事者らを確保する仕組みづくりを早急に整えるとともに、感染症対策の教育も含めた人材育成」を進めるよう注文した。

 東京一極集中の是正にスポットを当てた地方紙もある。東奥は在宅勤務の普及による働き方の変化について「地方にとって大きなチャンス」と指摘。移住検討者や企業のニーズをとらえて「冷え込む地域経済を回復させる追い風としたい」と強調。山陽は「地方も発想の転換が求められよう」と説いた。「力ある地方企業の全国展開や世界展開を後押ししたり、若者の起業を応援したりする枠組みも必要だろう。農林水産業とデジタル技術の組み合わせにも力を入れたい」と具体策を掲げた。

 神戸は人工知能の未来予測で、日本社会の進路が「都市集中型」と「地方分散型」に分かれたと紹介。都市集中が進めば格差が拡大するが「地方に分散すれば出生率が回復し、健康寿命が延びて個人の幸福感も増す」と説明した。その上で「テレワークや地方移住などを、分散型の芽に育てたい」と唱えた。

 世界に目を向けると、ウイルスの封じ込め策で生じた分断と憎悪は民主主義そのものにも暗い影を落としている。京都は、非常手段を取る国が相次ぎ「コロナが収束しても、危機に乗じて指導者の権限を強める独裁的な手法は温存される懸念がある」と指摘。ポピュリスト的な手法もまん延し「漫然と従う支持者が多ければ、やがて破壊的な結果をもたらしかねない」と警告。「いまを民主主義の『日没』にしてはなるまい」と訴えた。高知も「いつ何が起きてもおかしくない。まさに『不確実性の時代』」で「民主主義が揺らぎ始めている」と指摘。「土台が壊れそうならもう一度築き直して、その確実性を高める」1年にしなければならないと強調した。熊本日日も「権力に対して敏感であることが求められる。主権者である市民(シチズン)としての感覚を研ぎ澄ませておきたい」と呼び掛けた。

 各紙は今年の重要な節目もそれぞれ論じた。東京五輪について河北は「最大の平和の祭典も祝祭ムードは冷え込んだままだが、人知を結集すれば、コロナ試練は必ずや克服できよう」と唱えた。北國も、日本の感染状況は各国の中でも少なく「日本だからこそ五輪開催が可能ともいえるのではないか」と説いた。「世界の人々に開催地が日本で良かった、日本だからできたと思ってもらえるようなスポーツの祭典を開きたい」と期待を寄せた。

震災10年 復興新局面に

 知事選と衆院選がある今年を「選択の年」と位置づけたのは山形。「選良を選び出す機会」と訴え、有権者も「本県の姿をどう描き、次世代に何をつなぐのか」「将来を見据える視座と責務が問われている」と指摘した。中国は河井克行元法相夫妻の買収事件で「政治とカネ」の問題に言及。「今年は、総選挙という意思表明の機会がある。衆愚や専制に陥りやすい民主主義に、命を吹き込めるのは、主権者である私たちだけである」と訴えた。

 東日本大震災から10年でもある。北海道は「あのとき胸に抱いた『絆』の文字を思い起こす必要があろう。人と人との連帯を強め、この難局を乗り越えたい」と強調した。福島民友は21年度から5年間の第2期復興・創生期間に入ることに触れた。政府が整備する国際教育研究拠点について「人を育てることは社会を支えていく根幹となる」と期待を寄せ、復興の歩みを確かなものにしたいと記した。福島民報は、大都市圏集中型の国土構造の是正を菅政権に求め、まず「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地で結果を出すべき」と注文した。

 琉球は、施政権返還(日本復帰)50年を1年後に控える沖縄が「これから先の針路を決定する年になる」と言及。「自立へ向け県民が困難を乗り越え」取り組む年にしたいと結んだ。

ニュース25紙、企画・連載49紙

 【1面トップ】25紙がニュース、30紙が企画、19紙が連載でスタートした。ニュースと連載の主な見出しを拾う。

 《ニュース》河北「ユアスタ仙台 改修へ パーク構想と連動視野 22年度着手 市方針」、福島民友「原子力災害を仮想訓練 福島医大ソフト開発 コロナ禍3密回避」、中国「地方議員9割『不要』 国会議員からの交付金や寄付金 広島県内本社アンケート」、高知「カツオ養殖 未来開く 県内産学タッグ 挑戦中」、大分合同「豪雨時情報迅速に 大分大と地場IT連携」、沖タイ「新特区に恩納村有力 OIST軸 産業創出 沖縄版シリコンバレーへ」

 《1面連載》陸奥「拓く力 コロナ禍に生きる」、上毛「デジタルぐんま 未来と課題」、山梨日日「つないで 結んで コロナ禍の山梨から」、岐阜「パラダイムシフト 団塊―Z世代」、北日本「境界の彼方 とやま自治考」、神戸「サラバ東京 コロナ後の未来」、宮崎日日「Xin chaoみやざき 外国人労働者はいま」、琉球「ここから 明日へのストーリー」(審査室)

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