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2021年 9月14日
国民不在 強行の責任問う 東京五輪閉幕

「世界に勇気」 評価する見方も

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言の下で挙行された東京五輪が閉幕した。各紙の社説・論説は、選手の躍動を理由に開催をたたえる社があった一方で、冷徹な評価や課題の検証・改善が必要だとの厳しい指摘が目立った。五輪運営が抱える諸問題が露呈した上、医療ひっ迫や自宅療養死の増加に直面する国民の不安を無視できなかったためであろう。

情緒的な「意義」優先

 事前の世論調査では開催に反対する意見が多かった。5月の宣言延長後に慎重な対応を求めるとの社説が出始め、数紙は中止を訴えた。賛否は各紙で割れた。

 早くに社説で中止を求めていた信濃毎日は「もう腐食はごまかせない」との見出しで「この国の政治は情緒的な『意義』を優先した」と批判。理解が得られないなら中止すべきとしていた西日本は「多くの国民が理解したとは言い難い状況で開催を強行した」と振り返った。沖タイは「『感動で、私たちは一つになる』という大会モットーもむなしく響いた」と断じた。琉球は「理念なき開催が分断を生み国民不在の様相を呈した」と指摘。朝日も「深い不信と分断」を巡り「修復は政治が取り組むべき最大の課題」と主張した。

 京都は、飲食店等の営業制限や外出自粛を求める中で開催を強行したことで国民に抱かせた不公平感が「(コロナ)対策意識の緩みを助長した」と強調。神戸は「断行した政府は感染拡大の責任を免れない」と批判した。徳島も「コロナを甘く見た政府や大会組織委員会の責任は重い」とし、選手の活躍をもって「大会が成功したように喧伝することは許されない」とくぎを刺した。地元で競技が行われた北海道は「強行すべきだったのかどうか、今も疑問を拭えない」とし、2030年冬季五輪の札幌招致も「続けるかどうか市民の意見を丁寧にくみながら検討すべき」と提起した。

 一方で、報道を通じ選手の奮闘に励まされた人々も少なくなかったに違いない。読売は「困難を乗り越えて開催された異例の大会として、長く語り継がれる」とした上で「開催した意義は大きかった」と論じた。産経も、無観客でも「聖火を守り抜き、大きな足跡を歴史に刻んだ」ことを「誇りとしたい」と述べた。北國も、中止していれば「失意と後悔に打ちひしがれ」ただろうとして「五輪史上最も困難なミッションを、着実に果たした」と説いた。「世界の人々に勇気を与えたことは間違いなかろう」(山陽)などと、それぞれ開催実現を高く評価した。

 競技で強い印象を与えたのはスケートボードの若い選手の姿。「国を超えて仲間の演技をたたえ合う光景がすがすがしく新鮮」(山梨日日)、「『五輪って、いいな』と感じさせた」(デーリー東北)、「メダルにひけをとらぬほどの輝き」(熊本日日)など称賛が相次いだ。

 日経は「スポーツの力を存分に証明した」とする一方、「競技の削減」や「派手なイベント」の見直しを通じ「原点に立ち返るべきだ」などと改革に向けた論点を列挙した。

多様性の理念置き去り

 誘致以来の「復興五輪」の看板について、福島民友は「震災と原発事故からの歩みや現状、支援への感謝を発信する」には「不完全燃焼だった」、福島民報は「理念は薄れた」が、県勢の奮闘、県内での競技初開催など「本県に残したものを検証し、今後の復興につなげたい」と振り返った。河北は今後も理念を継承するため、「地元からの強いメッセージが必要」とした。

 基本理念として「多様性と調和」も掲げられたが、前大会組織委員会会長の森喜朗氏や開会式演出担当者の差別的言動の表面化に、毎日は「見せかけに過ぎないと多くの人の目には映ったはずだ」とし、「古い体質を改め」よと訴えた。中国も国内の大会関係者の「人権感覚の乏しさ」を指摘し、広島訪問もしたのに、「原爆の日」の黙とうを選手らに呼び掛けなかった国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も「薄っぺらさでは似たようなもの」とたたみかけた。新潟はバッハ氏らIOC幹部の「独善的な言動」を批判した。

 会場を都心に集約する「コンパクト五輪」構想についても、中日・東京は「破綻は明白」で「招致のための方便だったのではないか」との見方を示した。高知は、7~8月開催の背景に巨額放送権料を払う米テレビ局の意向があるとみた上で「肥大化した五輪のあり方を見直す時」と説いた。

 今大会で顕在化した諸問題の深い検証や記録を政府、東京都、組織委に求めた社説も多くあった。秋田魁は「世論を二分してまで開催した異例の大会」の「徹底した情報開示による透明性の高い総括と説明」を迫った。愛媛も「招致から閉幕までの光と影を検証し、大会の意義を見いださなければならない」と唱えた。(審査室)

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