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2021年 10月12日
対話拒んだ政治姿勢問う 菅首相退陣

コロナ対策「救えた命 救えず」

 自民党の岸田文雄総裁は10月4日、第100代首相に選出された。これに先立ち前任の菅義偉首相は9月3日、自民党総裁選に出馬しない考えを表明していた。直前まで出馬に意欲を示していただけに、このニュースは国民を驚かせた。各紙は社説・論説で、菅政権の特徴や功罪を総括。自民党総裁選や衆院選に向けて課題を指摘していた。

国民のため 覚悟どこへ

 朝日は「任期切れ直前の異例の党人事、総裁選を先送りするための衆院解散の検討......。再選が難しくなった首相の延命策が、党内の猛反発を買い、八方ふさがりになったというのが実情だろう」と退陣表明に至る過程を解説した。

 新潟は「辞める真の理由が人事の不首尾にあるならば、自らのもくろみが外れたために政権を投げ出すに等しい。『国民のために』の覚悟とは対極にあるものだろう」と批判した。河北も「政府の新型コロナウイルス対策の成果が乏しい中、最後まで権力維持に執着した揚げ句の『退陣表明』である。またしても政権の投げ出しが繰り返されたことで、国民の政治不信がさらに深まるのは避けられまい」と論じた。西日本は、新型コロナ禍で多くの国民が苦しむ最中に「政権党の迷走は悪い夢を見ているようだ」と嘆いた。

 菅氏の選挙区の地元紙・神奈川は「党内基盤の弱さが災いする形で行き詰まったのは皮肉だが、いまは政治的な空白が許される状況ではない。政権を後継に託す日まで『国民のため』を貫くことが、せめてもの責務である」と注文を付けた。福島民報は菅氏の「コロナ感染防止に専念したい」との発言を取り上げた。「辞任の意向を示し、党内や政権内で求心力を欠いたリーダー」が「迅速・的確に対応できるのだろうか」と疑問を呈した。

 菅政権の特徴は「説明しない政治」だと論じられてきた。岩手日報は「問われるべきは、異論を認めず、説明や対話を拒んだ、かたくなな政治姿勢だ」と断じた。毎日も「説明を軽視する首相の姿勢」が問われ続けたと強調。また「国会答弁や会見で質問に正面から答えず、原稿を棒読みする姿が目立った。コロナ対策を討議するため、憲法に基づき野党が求めた臨時国会の召集にも応じなかった」と指摘した。

 コロナ対策には厳しい評価が目立った。北海道は観光支援事業の継続にこだわったことなどを例示し「コロナ対策のちぐはぐさは枚挙にいとまがない」、福井は「『国民の命を守る』と明言しながら、ワクチン一辺倒に傾き、臨時病床の確保などにも本気で取り組む姿勢は見えないまま。救える命も救えなかった罪は重いと言わざるを得ない」と批判した。

デジタル庁に評価も

 一方、北國は「不可能といわれた1日100万人のワクチン接種に大号令をかけ、軌道に乗せた功績は、もっと評価されてよいのではないか」と投げ掛けた。

 読売も菅政権の功績に目を向けた。「デジタル庁創設や携帯電話料金の引き下げでは指導力を発揮し、一定の成果を上げた」「東京五輪・パラリンピックについては、『安全・安心な大会を実現する』と強調し、中止論を抑えて開催に導いた」と述べた。秋田魁もデジタル庁の創設に加え「孤独・孤立対策、不妊治療や子育て支援の拡大など、国民の困難に寄り添う政策も推進した」と一定の評価を与えた。その上で「地方創生を目指す『テレワーク推進による人や企業の地方移転』などは道半ば。引き継がれるべき政策だ」と指摘した。

 産経は「外交安全保障政策は安倍前政権を継承して手堅く進めた。アフガニスタンの退避作戦以外は成果をあげた」と分析。「バイデン米大統領との首脳会談では『台湾海峡の平和と安定』の重要性を確認し、日米同盟や先進7カ国(G7)、日米豪印の枠組み『クアッド』で対中抑止強化を戦略的に進めていた」と外交面での成果を取り上げた。

 総裁選、衆院選を見据えた指摘も。長崎は「国民の声としっかり向き合い、自分の言葉で語る新たなリーダーを、総裁選で選ぶ必要がある」と自民党に求めた。日経は「危機にあって、指導者に求められる貴重な資質のひとつが国民とのコミュニケーション能力だ」と説いた。他国が採用するロックダウン(都市封鎖)のような手法をとらない日本では「人流抑制などへの国民の理解と協力が不可欠である」と訴えた。中日・東京は「各野党も政権選択肢となるべく、政権構想を練り上げなければなるまい」と野党に言及した。

 静岡は「衆院選では立候補者の訴えに耳を澄まし、目を凝らし、この政治家なら自分の代わりに正しい判断をしてくれると信じる立候補者に1票を投じたい。その1票の選択こそが国民の声となり、政治を変える原動力になる」と呼び掛けた。(審査室)

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