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2022年 1月11日
社会の未来図描き直す 在京6紙の新年号紙面

民主国家の危機に警鐘

 新型コロナウイルス禍は2年たっても収束の兆しがなく、新変異株「オミクロン株」の感染が拡大している。2月には人権問題を巡る外交ボイコットも絡む北京冬季五輪、夏には岸田政権の試金石となる参院選が控える。在京各紙は不透明な未来を見通し、難局をどう乗り越えるかについて考える連載を展開した。1面トップは読売が独自ニュース、5紙が連載。社説・論説では、コロナ禍と、中露など権威主義国の圧力で民主主義・資本主義の歪みが拡大され、深刻な危機にあると訴える社が多かった。

ニュースは1紙、連載5紙

 【1面トップ】読売「米高速炉計画 日本参加へ 『もんじゅ』技術を共有 国内活用目指す 原子力機構など」=米国の次世代高速炉の開発計画に日本が参加することを報じた。日本原子力研究開発機構と三菱重工業が技術協力し、日本の施設で安全試験を実施する。日本は2016年に高速炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を決め、核燃料サイクルの見通しが立たなくなっている。計画への参加を通して高速炉の国内建設に必要な技術の獲得を目指しているとした。

 朝日「未来のデザイン1 プロローグ 未来予想図 ともに歩もう」=未来の社会をデザインしていくのは「私たち自身」だとした上で、「目指したい未来」から今を考えた時、コロナ禍の中で何をすべきかと問い掛けた。2人組の音楽グループ「DREAMS COME TRUE」が約2年ぶりに対面でのライブを開催したことを紹介。代表曲「未来予想図Ⅱ」の歌詞に触れ、ボーカル・吉田美和さんの「どう変わっていってもいい。時代と一緒に、みんなと一緒に、歩んでいけたら」との思いを伝えた。

 日経「成長の未来図① 資本主義 創り直す 競争→再挑戦→成長の好循環 解は『フレキシキュリティー』」=資本主義は戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期に続く3度目の危機にあると指摘。成長の鈍化が格差を広げ、不満の高まりが民主主義の土台まで揺さぶっていると分析した。北欧は日本より失業率が高いものの再就職の機会が多く不安が小さいとし、米国は格差拡大による「絶望死」が増え、寿命の伸びが止まったと紹介。翻って日本は雇用の安全を重視しすぎた結果「国民総貧困化」に陥りながらも多くの規制が温存され「柔軟性が決定的に欠ける」と概観した。

 産経「主権回復 第1部 2030への処方箋① 『電子暗号』覇者がAI社会制す ビッグデータ時代の情報安全保障」=日本が1952年にサンフランシスコ講和条約発効で主権を回復してから70年。2030年までに社会の様相が一変すると指摘される中、日本が独立国として真の意味での「主権」を取り戻し、国難をどう乗り切っていくべきかを探った。主要国がAIを駆使し覇権を争うデータ社会を生き残るには、量子計算でも解読されない暗号技術が鍵を握ると解説した。

 毎日「オシント(OSINT、オープンソース・インテリジェンス)新時代 荒れる情報の海② 日本読者装い『どうせ米は救ってくれない』 露、ヤフコメ改ざん転載 政府系メディアが工作か」=ロシアの政府系メディアがニュース配信サービス「ヤフーニュース」の読者コメント欄をロシア語に翻訳して転載する際、元の投稿の文章を改ざんしたり加筆したりした疑いがあると報じた。日米の分断をあおるような内容もあり、欧米などを標的に偽情報を拡散する情報工作との類似性や、ロシア国内の世論を固める狙いがあるとする専門家の分析を紹介した。

 東京「声を上げて デモのあとさき① 『脱原発』叫び 強くなれた」=首相官邸前で原発再稼働反対を訴えた20万人デモから10年。社会はどう変わり、どこへ向かうのかを見つめ直すため、声を上げ始めた人の姿を追った。写真家の亀山ののこさんは「子どもを守る」との決意で、2度目のデモ参加の際に「原発反対」と叫んだ。「思ったことを声に出すのがこんなに自分を力強くさせるとは思わなかった」と振り返る声を伝えた。

コロナ禍、権威主義の拡大懸念

 【社説・論説】日経「資本主義を鍛え直す年にしよう」=コロナ禍は世界が内包していた問題をあぶり出し、資本主義そのものを揺るがしていると分析した。資本主義の失敗は極端な思想や戦争を招いたと振り返り「大恐慌後に全体主義や共産主義が伸長し第2次世界大戦、その後の東西冷戦につながった」と指摘。高齢化、デジタル化などの構造変化で制度疲労が目立つ資本主義のほころびを繕う「不断の改革が、民主主義を守るためにも重要」だと訴えた。「体力低下が目立つ資本主義を磨き鍛え直す」年だと論じた。

 毎日「再生 22 民主政治と市民社会 つなぎ合う力が試される」=冷戦終結直後の「世界はいずれ民主化する」との楽観論は影を潜め、現在は専制的な権威主義の拡大が懸念されているとした。各国は感染症や気候危機など地球規模の問題に苦慮し、経済のグローバル化で拡大した格差を是正する有効な処方箋を示せていない。その結果、民主国家を中心に政治への不信や不満が強まっていると分析した。夏の参院選に向け「市民と政治をつなぐ民主主義の力が試されている」と強調した。

 読売「災厄越え次の一歩踏み出そう 『平和の方法』と行動が問われる」=金融資本主義の行き過ぎからさまざまな歪みが生じ、同時に中国の軍事大国化によって国の安全が脅かされる時代になったと説いた。「市場経済を健全な軌道に戻して活性化させ、平和で安定した国民生活を築くという二つの難題に立ち向かわなければならない」と訴えた。日本は中国に対し、自身の防衛努力、日米同盟関係の強化によって、地域の安全を脅かす行動に出れば重大な損失となることを認識させることが重要だと主張した。

 朝日「憲法75年の年明けに データの大海で人権を守る」=国家の多くが憲法によって権力を制約されるのと同様、大きな影響力を持つ米巨大IT企業にも一定の枠をはめ、個人を守る必要性に言及。「データの大海であるデジタル空間のありようをめぐる議論を、より深めたい」と提起した。IT企業の影響力拡大に関し日本の対応は遅れており、「国民の『知る権利』とのバランスに留意しつつ、データをめぐる自由と権利を整えていく必要がある」と論じた。

 東京「年のはじめに考える 『ほどほど』という叡智」=SDGs(持続可能な開発目標)の重要課題である温暖化をはじめ、自然や環境にさまざまな問題が生じているとした。原因は食べすぎ、とりすぎ、使いすぎといった「私たちの生き方の中に染み込んだ『過剰』に帰する」と指摘。「いい塩梅で、うまくさじ加減をしながらやるならば」人間と自然のよい関係も長続きさせることができると説いた。

 産経「年のはじめに さらば『おめでたい憲法』よ」=平和が続いた日本の体制不備を指摘。台湾有事が近い将来起きる可能性を唱え「在留邦人や尖閣諸島を抱える先島諸島住民の避難をどうするのか一つとっても何の準備もできていない」と断じた。憲法や現行法が有事対応の邪魔をしているのであれば、改めるのが政治家の使命であり、国会は今年こそ憲法改正を議論しなければならないと訴えた。

 【主な連載企画】朝日=国際面「それでも、あなたを 愛は壁を超える」、東京面「Tokyoシンフォニー」、毎日=東京面「東京遺産 レガシー」、社会面「明日はここに コロナ禍を生きる」(12月31日から)、読売=国際面「家族のかたち」(1月3日から)、地域面「ツリーとともに10th」、社会面「遠くて近くて」(同)、日経=ビジネス面「ニューワーカーの夜明け」、社会面「Re:Connect つながり再び」、産経=東京面「浅草物語」、社会面「18歳の地図」、東京=暮らし面「静かに味わう コロナで変わる食」、社会面「壁越えて」

 【元日号ページ数(かっこ内の数字は2021、20年の順)】朝日92(92、108)▽毎日68(64、64)▽読売86(82、90)▽日経92(104、112)▽産経72(72、76)▽東京46(48、48)(審査室)

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