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2022年 2月8日
政府・米軍の「無策」批判 「基地由来」のコロナ感染拡大

地位協定見直し要求も

 新型コロナウイルス禍の「第6波」が続いている。急拡大のきっかけとみられたのは、沖縄などの在日米軍基地での感染者急増と基地外への広がりだった。多くの社が社説・論説で米軍の感染対策の緩みとそれを放置した日本政府の無策を批判した。背景にある日米地位協定の改定を求める言説も続き、両国の軍事・外交関係にも議論は及んだ。

PCR検査免除に憤り

 沖縄はコロナ禍に苦しみ続けてきた。昨年11月にオミクロン株感染者が国内で初めて確認された直後、琉球は「在沖米軍基地からの感染流入に備え、米軍関係者との情報共有や対策も急務」だと警鐘を鳴らした。しかし恐れは具現化し海兵隊基地内で大クラスターが発生。地位協定により米軍が日本側の検疫を受けずに沖縄入りしたことに関し、沖タイは「水際対策の穴をふさげ」と要望。琉球は検疫義務化に向け「協定の改定は必須」だと説いた。

 同様の状況は神奈川県横須賀市、山口県岩国市などの米軍基地でも判明。朝日と毎日は、政府の責任で水際対策の穴に対応するよう求めた。熊本日日は「断固たる態度で米側に感染阻止策を促す」よう迫った。

 在沖米軍が出入国時にPCR検査を受けていなかったことが分かると、沖タイは「振る舞いはめちゃくちゃ」で「県民の命や安全を軽んじる米軍に、沖縄に駐留する資格はない」と批判。今回の事態を許したのは「日本政府の怠慢」だと断じた。琉球も「米軍特権の問題が改めてクローズアップされた」「政府の本気度が問われている」などとした。

 年が明けると、市中感染が広がり始めた。三沢基地のある青森県の陸奥は「在日米軍の対策の甘さもあり、従来の水際対策は限界に達したようだ」と論じた。岩国基地に近い中国も「米軍基地内の感染が『抜け穴』になったのは間違いあるまい」とし、「国が責任を持って」対応するよう求めた。

 産経は、米軍がPCR検査なしで入国したことは誤った対応で「住民が怒るのは当然」だとし、「反基地感情は日米同盟の抑止力を損なう」と事態が深刻化する懸念を表明した。秋田魁も「両国間の信頼関係も損ねかねない」と述べた。

 2022年1月。「基地由来」とみられる感染拡大によって沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置の適用が決まった。林芳正外相がブリンケン米国務長官に米軍の外出制限などを求めたが、日経は「遅すぎた」と指摘。西日本は「特権にあぐらをかいたような対応で緊張と誠意を著しく欠いていた」と米軍を非難した。

 中日・東京は「ドイツ、イタリアは駐留米軍に対し、検疫に関する国内法適用や基地立ち入りの権限を持つ」と米軍に対する日本政府の立場の弱さに着目。地位協定の改定は「喫緊の課題」だと強調した。福井は感染防止策の強化を「協定改定に踏み出す契機とすべき」だと提案した。「協定が感染拡大の一因となっていることを、日米両政府は重く受け止めるべきだ」(愛媛)、「協定の抜本的な見直しが必要」(高知)などの主張がみられた。

 日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)はこの時期に開かれた。しかし、協定見直しはテーマとならなかった。岸田文雄首相や林外相、岸信夫防衛相による改定否定を受け、上毛は「こうした弱腰で住民を守れるのか」と問い掛けた。琉球は、韓国では米軍に韓国側が検査を実施したとし、協定見直しは「日本全体の問題」だと訴えた。

「国民の理解」が同盟の礎

 読売は在日米軍に対し「住民の理解がなければ安定的に駐留できない」ことを「もっと強く認識すべきだ」と注文を付けた。北國も「反米・反基地感情につながる心配も否定できない」ため「コロナ問題を甘く見ず、防止策に真摯に」取り組むよう求めた。日経は日米同盟について「国民の幅広い理解が土台」だとした。米軍基地は「平和維持のため重要」だとする産経も「米軍は猛省し徹底したコロナ対策を講じるべきだ」と要求。三沢基地の感染者数の報告が「極めてずさん」だというデーリー東北は、地元が掲げてきた「基地との共存」を「根幹から揺るがしかねない」と戒めた。

 八重山毎日は「県民の切実な声に対して『ガス抜き』程度にしか対処しない国の姿勢が腹立たしい」と憤った。北海道は駆逐艦の小樽寄港が米国側の通告のみで可能であることにも触れ、地位協定は「米軍にあまりに都合良くできている」と指摘。日本政府に協定見直しなど「毅然とした対応」を求めた。山梨日日は地元に米海兵隊が駐留した時代の「不条理」を思い起こし、「自分事として捉えたい」と締めくくった。神奈川も県内の基地を念頭に「『米軍だけ特別扱い』はウイルスには通用しない」と断じた。コロナ禍への対応を巡り米軍や日本政府への不信・疑念が次々と発せられている。(審査室)

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