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2022年 3月8日
不透明な競技運営を批判 北京冬季五輪

IOC 中国の政治利用黙認

 2月4~20日に開かれた北京冬季五輪では商業主義化が進んだ五輪を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)などの体質が問われた。新型コロナウイルス対策のため外部との接触を遮断する「バブル」方式は、中国の人権状況も覆い隠した。選手は処罰を恐れ自由な発言を控えた。競技運営の公正さが議論になり、ドーピング問題も噴出。中国への厳しい論調が目立った。

持続可能性の模索必要

 開幕時の社説で、静岡は「莫大な開催費用に、招致に動く都市が減るなど五輪離れは顕著だ。気候変動の影響で冬季大会は今後、多くの地域で開催困難になるという研究調査もある。コロナ禍も教訓にしながら、IOCは持続可能な五輪の姿を模索していく必要がある」と主張した。京都もIOCに対し「五輪の価値と基盤を自ら崩していることを猛省し、望まれる大会像を模索」するよう求めた。

 開会式での「外交的ボイコット」を巡り、沖タイは「五輪を国威発揚の機会にしたい中国と、対中包囲網を敷きたい米国中心の連合による政治対立が、競技への関心をかすませている」と嘆いた。産経は選手を応援したいとしつつ、「大会そのものは歓迎できない。深刻な人権問題を抱える中国の首都が『平和の祭典』の開催地にふさわしくない」とした。毎日は「処罰をちらつかせるような高圧的な運営が世界に理解されるとは思えない」「アスリートの意思表示が不当に封じられるようなことがあってはならない」とくぎを刺した。

 ノルディックスキー・ジャンプ男子の小林陵侑選手は金、銀のメダルを手にした。地元紙の岩手日報は「岩手からも高い空へ羽ばたける。コロナ禍に内向き志向が強まる中、二つのメダルは世界は決して遠くないことを、若者たちに伝えるメッセージともなった」と賛辞を送った。スノーボード男子ハーフパイプでは平野歩夢選手が金メダルを獲得。地元紙の新潟は「刺激を受けた子どもたちも多いだろう。本県のスキー、スノーボード人気が盛り上がり、将来の冬季五輪で頂点を狙える選手の輩出につながってほしい」と記した。

 一方、ノルディックスキー・ジャンプ混合団体の高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格となると、競技運営のあり方が批判された。陸奥は「今回のような後味の悪い事態を防ぐには、検査の透明性を向上させるといった取り組みが必要ではないか」と主張した。

 徳島は「ひいきの選手に不利な評価が下されると、審判への批判が殺到する。ネット全盛時代を迎え、感情に支配されない度量が必要だ」と冷静さを求めた。「メダルを取れなくてもそれまでの努力が色あせるわけではない。私たちも過度のメダル至上主義から脱却すべきではないか」(宮崎日日)、「結果だけに焦点を当ててしまっては、スポーツや友情・連帯を理念とする五輪の本質を見誤る」(福井)との指摘も上がった。

ドーピング疑惑解明を

 多くの社がフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手のドーピング疑惑を社説で取り上げた。愛媛は「スポーツの価値をおとしめる行為で、厳しく対応しないと五輪の存在意義が問われる。IOCや各国は根絶への決意を新たにすべきだ」と訴えた。「ロシアのドーピング違反に及び腰の対応を繰り返してきたIOCには、もう『灰色』決着は許されない」(中国)、「地に落ちようとしている五輪の威信が少しでも守られ、公正で公平な舞台と言われるよう、IOCと世界反ドーピング機関は真相の解明に全力で取り組むべきだ」(山梨日日)と厳しい意見が相次いだ。

 朝日は中国の人権状況について「期間中に話題に上ることはあまりなかった」と振り返った。背景に「大会組織委員会が国内法に基づく処罰をちらつかせ、選手らの言動を縛ろうとしたこと」があると分析。「国際社会からは厳しい目が注がれている。中国はそのことを忘れてはならない」と戒めた。

 読売は「運営の不手際や不可解な判定が後味の悪さを残した」「採点基準の曖昧さや微妙な判定など、熱戦に水を差す問題が随所に見られたのは残念だ」とした。神戸も「IOCや競技団体は選手らの疑念に向き合い、運営の透明性を高める改善策を示してほしい」と訴えた。

 北京五輪を通じ、開催意義が問われるほどの五輪の劣化がより明確になった。信濃毎日は「IOCは、大会の政治利用やドーピングの問題解決に、ほとんど力を発揮しなかった。中国による政治利用に寄り添う姿勢すら見せた。大会の意義を忘れ、開催自体が目的化していたと批判されても仕方がないだろう」と突き放した。日経は「理念とかけ離れた大会のあり方は、五輪の存続そのものを危うくしかねない。IOCは組織と五輪運営の抜本的な改革に乗り出す時に来ている」と結んだ。(審査室)

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