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2022年 6月14日
対中 抑止と対話必要 日米首脳会談開催

クアッドも 協力の輪拡大期待

 岸田文雄首相とバイデン米大統領は5月23日、対面による初の本格会談で同盟強化を確認した。各紙は社説・論説で、日米がインド太平洋地域の平和と繁栄を守る姿勢を明確にしたことを評価する一方、中国との緊張を高める危険も指摘。共存の道を探るよう求めた。同24日の日米豪印4か国の「クアッド」首脳会合については、軍事だけでなく幅広い分野で連携を図り、協力の輪を広げるよう訴えた。

 山陽は日米首脳会談を巡り「軍事力を急拡大している中国や、ウクライナへ侵攻したロシアにより国際秩序が揺らいでいる。自由や民主主義の価値観を共有する日米が、その維持・発展に向けて責任を果たすと改めて決意を示した意義は大きい」と評価した。

 一方、朝日は「包囲網ばかりを強め、力に傾斜した先に何が起こりうるのか。欧州の歩みからくみ取れる教訓もあるはずだ」と問い掛けた上で、ハイレベル対話など「日本自身の主体的な対中政策が問われている」と論じた。

 バイデン氏は会見で、台湾有事に米国が軍事介入すると明言した。岐阜、佐賀、宮崎日日などは「『あいまい戦略』を、少し明確にする方向へ変更したものと受け止められている」と分析。「紛争を回避するには軍事介入の意思とともに、中国を説得する対話が必要」だと説いた。産経は「力の信奉者である中国には外交上の微妙な言辞は通じない。米大統領が台湾防衛の意思を発信した方が対中抑止力は高まる」と断じた。

専守防衛逸脱を懸念

 両首脳は米国の拡大抑止強化と日本の防衛力強化も確認した。愛媛は、米国が「核兵器と通常戦力で同盟国を守る意思を示し」「日本防衛に全面的に関与するとアピールした」とみた。日経は「引き続きあらゆる機会を通じて強固な拡大抑止を確認し、その枠組みへの信頼性を高めてもらいたい」と注文を付けた。

 読売は「『防衛費の相当な増額を確保する決意』を表明した首相の指導力が問われよう」と指摘。「日本は、武力攻撃に対する反撃能力の保有を検討している。その運用は、自衛隊と米軍の密接な連携が前提となる」ため「共同訓練などを拡充」するよう求めた。

 一方、西日本は敵基地を攻撃する反撃能力は、「憲法に基づく専守防衛を逸脱する可能性がある」と警告した。中日・東京も防衛力強化は「憲法九条の枠内にとどめるべきは当然」だと主張。防衛費を国内総生産(GDP)比2%にまで増やせば「『平和国家の道』を大きく外れてしまう」と訴えた。

 北朝鮮については、核ミサイル開発に対する深刻な懸念を共有した。日米、日米韓で緊密に連携するとした。南日本は「日本人拉致問題も米韓の協力を得ながら早期解決につなげたい」と論じた。北日本は、先進7か国首脳会議(G7サミット)を来年、広島市で開くことが合意されたことについて「主要国の指導者が、原爆投下による惨禍の実相に触れ、平和の大切さを発信する意義は大きい」と評価した。山口は国連改革に関し、バイデン氏が「日本の安全保障理事会常任理事国入りに支持を表明」したことに着目した。

 米国が提唱した経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)も発足した。中国は、参加13か国で世界のGDPの4割を占める「規模の大きい枠組み」であり「インドが参加していることは、大きな意味を持ちそうだ」と分析した。

 一方、沖タイは「関税引き下げなどは議題としない仕組み」のため「実効性に疑問符がつく」と指摘した。毎日も「市場開放などの利点は少なく」、中国に対する「『排除の論理』が前面に出るようでは、経済連携は広がりを欠く」と危惧した。新潟は自由貿易を推進する環太平洋連携協定(TPP)についても「復帰を米国に粘り強く働きかける必要がある」と説いた。

有事防ぐ知恵見えず

 翌日に開催された「クアッド」首脳会合を巡り、北國は「全ての国の主権と領土の一体性を尊重し、東・南シナ海での威圧と挑発に対抗する意思を共同声明に明記した意義は大きい」と評価。高知はロシアと中国の名指しを避けたため「足並みをそろえる難しさを露呈してしまった」と分析した。

 徳島は「インド太平洋地域のインフラ整備に500億㌦(約6兆3800億円)以上の支援や投資を実施する方針」は「中国の巨大経済圏構想『一帯一路』に対抗する狙いがある」と指摘。神戸は島しょ国に対し「衛星情報提供などで海洋状況の把握能力を支援し、違法漁業監視や災害対応に取り組む方針を示した。協力の輪が地域全体に広がることを期待したい」とした。

 信濃毎日は、両会談から見えたのは「軍事、経済の両面から、いかに有事に備えるかだった。どう有事を防いでいくか。外交の知恵を絞ろうとする各国の姿勢は見えずじまいだ」と結んだ。(審査室)

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