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2022年 12月6日
世論の分断浮き彫り 米中間選挙 上下院で「ねじれ」

トランプ氏の影響力に陰り

 11月8日の米中間選挙は民主党が上院で多数派を維持し、バイデン大統領は一定の求心力を保った。一方、下院は共和党に奪還された。政府と議会の「ねじれ」が生じ、今後の政権運営は難しくなった。共和党は大きく議席を増やす予測が外れ、トランプ前大統領の影響力が後退したとみられる。今回の選挙から、米国世論の分断の根深さが浮き彫りとなった。

民主主義の在り方焦点

 信濃毎日は「選挙前は、共和党がバイデン政権の財政支出が記録的なインフレを招いたと批判し、追い風を受けているとみられていた。中間選挙は歴史的に与党が批判され、敗北することが大半でもある。民主党は今回、健闘したといえる」と総括した。

 高知も「民主党は、最高裁が6月に否定した人工妊娠中絶の憲法上の権利擁護を掲げて、支持を挽回した」「一時は大敗も予想されたが踏みとどまった」と分析。南日本は「保守的な考えが社会に強まることへの不安が女性を中心に広がり、民主党大敗とはならなかったようだ」と考察した。

 神戸は「何よりも民主党が重視したのが『民主主義のあり方』だ。バイデン氏は、昨年のトランプ氏支持派による連邦議会議事堂襲撃事件に象徴される民主主義の危機を訴えた」「多くの有権者が選挙結果を受け入れないこうした行為に警戒感を抱いたからではないか」と解説した。一方、西日本は民主党の善戦で「『民主主義の試練を克服した』というバイデン氏の見解は、あまりに楽観的過ぎないか」と疑問を呈した。

 今後の米国の政策への影響について、山陽は「政権と議会の間で『ねじれ』が生じることで法案成立などは困難になり、バイデン氏の任期後半のかじ取りは苦しさを増すことになろう」と予測。産経も「中間選挙後の米国は『内向き』に拍車がかかる恐れがある」と危惧した。

 読売は「国際社会にとっての関心事は、米国がウクライナに対する大規模な軍事・人道支援をこれまで通りに続けられるかどうかだ」とした。米国世論で「支援疲れ」が表面化していると指摘。バイデン政権は支援の予算確保に努め「議会も超党派での支持を続けるべきだ」と求めた。

 茨城、山梨日日、岐阜、長崎などは「2024年大統領選に向けて米政界は政争の季節」に入るとし、「内政の混乱で対外指導力を発揮できなくなる懸念がある。日本は米国の揺らぎに万全の備えをするべきだ」と訴えた。

 日経は、日欧などの「同盟国は緊密に連携し、米政権を支えるべきだ。日本自身が防衛力の強化などに取り組み、インド太平洋を中心とする世界の安定に貢献すべきなのは言うまでもない」と説いた。

 一方、共和党について、愛媛は「シンボルカラーにちなみ『赤い波』と呼ばれたうねりは起きず、大勝で返り咲きへの流れをつくるトランプ氏の狙いは外れた」と分析。河北も「前大統領が陰の主役となる異例の選挙戦だった」と振り返った。党勢の伸び悩みは「『トランプ政治』を終焉に向かわせる分岐点となるのではないか」と予測した。

 福井は「対決姿勢一辺倒では政治分断が深まり、無党派層はますます離れかねない。米国民がトランプ氏の乱暴ともいえる手法に懸念を示したからには路線転換を迫られ、党内軋轢を生む可能性もある」とみた。

 トランプ氏は、自身の責任論も出る中で次期大統領選への出馬を表明。新潟は「昨年1月の議会襲撃事件を主導した疑いや、機密文書を私邸に持ち込んだ疑惑で捜査を受けている」最中に「大統領候補に名乗りを上げることで起訴されにくくするもくろみがあるとすれば見過ごせない」と指摘した。

統治機構の信頼に揺らぎ

 選挙戦では米社会の溝が埋まっていない現状があらわになった。

 朝日は「分断の病は深刻だ。下院議長宅が襲われるなど、政治への暴力や脅しが増えた。地方政治も過激化し、南部の州が大勢の移民を北部に移送する騒ぎが起きた。最高裁批判も過熱し、統治機構全体の信頼が揺らぐ」と警告。「危機感を与野党で共有し、政治のゆがみを正すべきだ」と訴えた。

 中日・東京は「人々の代表を選ぶ平和的手段である選挙をめぐって、恐怖と猜疑心が渦巻いた」とした上で、「民主主義の土台が崩れつつある。立て直しへ米国の覚醒を望みたい」と注文を付けた。

 毎日も「銃規制、中絶、同性婚、差別是正措置などをめぐり、異なる意見に耳を貸さない不寛容が広がる。価値観をめぐる『文化戦争』である」と論じた。

 北國は、中国が「民主主義が機能不全に陥っていると指摘した上、共産党指導による中国独自の民主制度の優位性を誇示」しており「政治宣伝をさらに強める恐れがある」と危惧した。(審査室)

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