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2023年 1月10日
平和再構築へ一歩促す  在京6紙の新年号紙面

分断修復 「他者の視点」が鍵

 ロシアのウクライナ侵攻は、情勢が膠着し出口が見えず、ミサイル実験を繰り返す北朝鮮は12月31日にも弾道ミサイルを発射した。新型コロナウイルス感染による12月の国内の死者数は計7400人を超え、1か月当たりで最多となっている。国内は物価高が暮らしを直撃している状況も変わらない。3年ぶりに行動制限がない年末年始となりやや明るさを取り戻したものの、内外の情勢の厳しさに変わりはない。在京6紙は安全保障、民主主義をテーマとした記事が目立った。1面トップは読売が独自ニュース、朝日がインタビュー。4紙は連載を据えた。社説・論説では、戦争防止や分断の修復、民主主義の再生などに向けた取り組みを促す論調が多かった。

ニュースは1紙、連載4紙

 【1面トップ】読売「日韓レーダーを接続 北ミサイル探知、即時共有へ 米を経由、迎撃能力向上」=日韓両政府による北朝鮮のミサイル探知・追尾に向けた技術的な検討が始まっており、早ければ年内実現を目指すと報じた。レーダー波が届かないため、日本は発射直後の探知、韓国は落下時の追尾ができない課題があると説明。実現すればミサイルの飛行データをより早く把握でき、全国瞬時警報システム(Jアラート)の早期発信につながる可能性もあるとした。

 朝日「誰もが孤独の時代 人間性失わないで ノーベル賞作家 アレクシエービッチさん」=ベルリンで事実上の亡命生活を送るベラルーシの作家・アレクシエービッチさんに話を聞いた。ウクライナのロシア軍占領地域で繰り返された民間人への残虐行為などを「人間から獣がはい出している」と表現。人はどうすれば救われるのかと問われ「私たちの誰もが、とても孤独です。人間性を失わないための、よりどころを探さなくてはなりません」と語った。

 毎日「『平和国家』はどこへ① 日台に軍事連絡ルート 水面下で構築 現場同士通話 中国の台湾侵攻に備え」=安保関連3文書の改定で「矛」を持つ方向にかじを切った「平和国家」の今後を探った。日台両政府は直接的な対話を避けているが、侵攻など台湾有事への危機感から自衛隊と台湾軍は直接やりとりできる連絡体制を構築していると報じた。水面下での協議も重ねていると明らかにし、さらなる強化が検討されているとした。

 産経「民主主義の形 第1部 試される価値1 民主主義守る闘いは続く 米議会襲撃で警官が得た『教訓』」=中国やロシアといった専制主義勢力の横暴な振る舞いを前に、民主主義の価値を守り抜いていくことが以前にも増して重要になっていると分析した。スウェーデンの研究所の報告書によると、世界179か国・地域で「自由民主主義国」は1995年以来最少の34にとどまると紹介。一方の「独裁体制」は過去1年間で25から30に増えたと危機感を示した。

 東京「まちかどの民主主義 ①協同労働 話し合いを あきらめない みんなが社長 みんなが従業員」=政治家の力を借りずに自分たちの手で民主主義を高めていこうとする動きが広がっていると指摘。働く人全員が出資し、全員で経営方針を決める「協同労働」を取り上げた。2022年10月に労働者協同組合法が施行され、協同労働は法人格の取得が可能になった。学童保育を運営する協同労働が一人一人の意見を聞き、時間をかけて各自が納得しながら運営している様子や、詳しい仕組みを説明。「話し合える場」の大切さを説いた。

 日経「Next World 分断の先に① グローバル化 止まらない 世界つなぐ『フェアネス』」=分断が強まっても、「外」とのつながりを求める人々の営みは途切れず、世界をつなぐのはイデオロギー対立を超えたフェアネス(公正さ)だと強調。世界各地の新たな動きを掘り下げ「フェアネスを礎に分断をつなぐ取り組みが不可欠」と訴えた。自社で、人権の尊重など10指標を用いて「フェアネス指数」を算出し、世界84か国・地域の状況を示した。

民主主義再生は足元から

 【社説・論説】朝日「戦争を止める英知いまこそ 空爆と警報の街から」=ウクライナの街の様子や市民の思いを紹介。その上で、国連は機能不全をさらけ出したと指摘し、戦争という蛮行を止める策、一人の強権的な指導者の専横を抑制する有効な枠組みがないと強調した。戦争を一刻も早く止め、同時に戦争を未然に防ぐ確かな手立てを今のうちから構想する必要があると提言し、「人類の将来を見すえ、英知を結集する年としたい」と結んだ。

 読売「平和な世界構築へ先頭に立て 防衛、外交、道義の力を高めよう」=戦闘を終わらせ、平和を再構築する作業の先頭に日本が立つべきだと訴えた。防衛力の強化、外交での貢献のほか、国際社会での発言力には道義の裏付けも不可欠だと指摘。「人類共通の、国際規範に則った行動を、まず国内で実践していなければ、主張も説得力を欠く」と説いた。内政と外交は一体であり、充実した国力、公正な行動は国内政治が不安定では成り立たないと警告した。

 日経「分断を越える一歩を踏み出そう」=コロナ禍からロシアのウクライナ侵攻という未曽有の危機の中で世界の分断と対立が増幅されたものの、首脳同士の直接対話が動き出すなど修復への芽がないわけではないと期待を表明した。今年5月には議長国として広島での主要7か国首脳会議を主催し、国連安全保障理事会の非常任理事国を2年間務める日本。「分断修復に外交力も発揮したい」と求め、「今年こそ難しい問題を解きほぐし、前に一歩を踏み出す年にしたい」と願いを込めた。

 東京「我らに『視点』を与えよ 年のはじめに考える」=他者の視点から物事を見る重要性について説明。ウクライナ侵攻やミャンマーでの市民への弾圧などを挙げ、指導者たちが、他国や自国民の視点から、自分のしたことを冷静に眺めてくれたらと思わずにいられないと記した。「〈我らに他者の『視点』を与えよ〉。そうすれば、今、世界を覆うひりつくような分断や対立の空気を、わずかずつでも穏やかなものに変えていくテコにならないでしょうか」と唱えた。

 毎日「再生へ市民の力集めたい 危機下の民主主義」=民主主義の危機は複合的であるものの、通底しているのは人々の不満と不安だと分析。「市民の力を生かし、実効性ある民主主義をいかに作り上げるかが問われている」との識者の指摘を紹介。地球温暖化対策を生活者の視点で話し合う「気候市民会議」の広がりへの期待を示した。その上で「どうすれば政治を立て直し、民主主義を再生することができるか。足元から考える年にしたい」と訴えた。

 産経「『国民を守る日本』へ進もう 年のはじめに」=安保政策の大きな転換は岸田文雄首相の業績であり、国民の多数は防衛力強化を支持していると強調。抑止力と対処力の向上が急がれるとし、反撃能力の円滑な導入、弾薬や整備部品の確保、シェルター担当相の任命、核抑止態勢強化の具体策を求めた。さらに敵対的な国での邦人救出作戦放棄は「国民を守らない9条の呪縛」だと指摘。「日本が国民を守れる国になるには乗り越えるべき壁がまだある」と論じた。

 【主な連載企画】朝日=生活面「気候危機と住まい 適温で暮らしたい」、文化面「トゲトゲしてるけど...分断考2023」、社会面「タイパ社会 豊かな時間はどこに」(12月30日から)、毎日=社会面「sideB 裏面を追って」、読売=政治面「語る 新年展望」、文化面「時(とき)ほぐす」、日経=ビジネス面「リスキリングが変える」、社会面「トキコエテ」(12月30日から)、産経=社会面「コロナ その先へ」、東京=国際面「侵攻の波紋――あらがう人々」(12月29日1面から)、暮らし面「日常再発見 カガクでフォーカス」、社会面「それ、変えませんか?」

 【元日号ページ数(かっこ内の数字は2022、21年の順)】朝日86(92、92)▽毎日64(68、64)▽読売86(86、82)▽日経92(92、104)▽産経68(72、72)▽東京46(46、48)(審査室)

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