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2023年 5月9日
関心低下で自治崩壊憂慮 統一地方選・衆参5補選

「辛勝」の自民に厳しい見方も

 統一地方選挙と衆参5補欠選挙が4月に実施された。補選は自民党が4勝で議席を増やしたものの、各紙は辛勝だったことを指摘。岸田文雄首相に気を引き締めて政策に取り組むよう求めた。日本維新の会は補選で1勝。統一選でも地方議員数が目標の600人を大きく上回った。各紙は社説・論説で、統一選前後半を通して投票率の低下と無投票当選の増加が進んだと指摘。選挙の在り方や地方自治崩壊の深刻な危機感を論じた。

「国民本位の政治」必要

 補選を4勝で乗り切った自民に対し、朝日は「内閣支持率が復調傾向にあるなか、想定外の大接戦となったことを、岸田首相は重く受け止め、政権運営を厳しく反省する糧としなければならない」とくぎを刺した。

 毎日も、首相は安全保障や原発政策の大転換を進めたが、「街頭演説で負担増につながる議論を避けた」と批判。「疑問に正面から答えない不誠実な姿勢」だとして「国民本位の政治を丁寧に進めなければならない」と注文を付けた。

 一方、中日・東京は4野党が乱立した衆院千葉5区について「合わせて自民党の二倍の票を得ながら同党に議席維持を許したのは、有権者への背信行為」と批判。次の国政選に向け「政権批判票が行き場を失わないよう受け皿づくりを急ぐ」よう各野党に求めた。

 読売は野党同士が選挙協力した参院大分について、「戦術としてはあり得るが、理念や基本政策の異なる共産党までを含めた協力は無理がある」と指摘。G7広島サミット後の解散論も浮上する中、補選で全敗した立憲民主党を巡り「現実的な政策を練り上げるとともに、地道に地方組織を強化していくことが大切だ」と説いた。

 維新は統一選前後半を通して勢いがあった。知事と市長の「大阪ダブル選」、奈良県知事選で勝利。大阪の府議選と市議選では過半数を獲得した。神戸は「有権者は、維新が進めてきた改革路線を一定評価した」と分析する一方、「地方自治は、住民が首長と議員を選挙で選ぶ『二元代表制』である。政党や政治家は幅広い視野で政策論議を交わし、首長の行政運営をチェックするという、議会本来の機能を見つめ直さなければならない」と強調した。

 南日本は、「大阪ダブル選」で争点となったカジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)誘致を巡り、賛否は割れていると指摘。「民意を丁寧にくみ取る姿勢が欠かせない」と注文を付けた。

 産経は、各地方選で当選した首長には予算編成権など首相より強い権限が与えられており「大胆に指導力を発揮し、地方の衰退に歯止めをかけるのが最大の責務だ」と説いた。

選挙の再統一提案も

 統一選を通して、投票率の低さと無投票当選が目立った。

 日経は「統一地方選のあり方を見直す時期にきたのではないか」と問題提起した。「経費縮減とともに全国的な関心を高め投票を促すため」選挙の再統一を図り、「今は3〜5月に任期が満了する選挙が対象だが、この期間を広げてはどうか」と提案した。無投票当選については「都道府県議会は定数削減の余地がある」と論じた。

 下野、上毛、岐阜などは「有権者が投票権を行使しないと、住民自治の実現はおぼつかない」とした。地域課題への対応を「首長や議員に『白紙委任』したとみなされかねないことを改めて自覚してほしい」と呼び掛けた。

 静岡は若年層の選挙離れを巡り、「高齢世代の成功体験と規範意識に政策決定が左右される事態を招く。分配政策重視の借金財政が続きやすく『シルバー民主主義』と称される」と指摘。若者の政治参加を拡大するため「被選挙権年齢を下げるべきとの主張がある」と提起した。

 山陽も「なり手不足から無投票になり、無投票が地方政治への関心を低下させる」「負の連鎖を断ち切らねばならない」と強調した。

 一方、河北は徳島、奈良、大分の各県における多選知事交代に着目。「保守系の候補同士で争う構図が目立ち始めている。対抗勢力の登場と論戦の場を望む民意の表れ」と分析した。「権力の固定化による政治の安定は、新陳代謝を欠いた停滞や組織の風通しの悪さを招く弊害と裏腹にある」と論じた。

 神奈川は女性議員増加に注目。政治分野で議論や政策の多様化を進める必要があり「日々の暮らしに密着した課題を議論する地方議会には、女性の視点が欠かせない」と意義を説明した。ただ、その割合はまだ低く「目指す姿には程遠い」と訴えた。

 北海道は首相襲撃事件に触れ「与野党とも最後まで選挙を遂行し、暴力に屈しない強い意思を示した。言論の自由と要人警護の強化の両立を図り、民主主義の根幹を支えることが大事だ」と付け加えた。(審査室)

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