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2023年 8月8日
暴力の連鎖 見逃さない 安倍元首相銃撃から1年

閉塞感漂う政治変える時

 安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に銃撃され、死去してから7月8日で1年となった。各紙は社説・論説で民主主義の意義を確認したり、テロ対策の重要性を訴えたりした。安倍政権の功罪を分析しながら、現在の政治の課題を論じる社も多かった。旧統一教会と政治との関係や国葬を巡るルール作りなど、事件を機に注目を集めた課題についても指摘が相次いだ。

安全な社会守る決意表明

 福島民友は「私たちが政治を通じてより良い社会をつくっていこうとするとき、頼るのは暴力ではなく言葉であり、手にするのは凶器ではなく、投票用紙だ。民主主義を守るのは国民一人一人であることを肝に銘じたい」と呼び掛けた。岩手日報は4月に起きた岸田文雄首相の演説会場での爆発事件を挙げ、「政治への不満や主張を暴力によってぶつける風潮の連鎖ならばとても見逃せず、危機感を高めなければならない」と訴えた。毎日は「民主主義を破壊する暴挙が繰り返されることがないよう、自由で安全な社会を守る決意を新たにしたい」と表明した。

 読売は「SNSを中心に、重大事件を起こした人物に過度に同情したり、英雄視したりする風潮がみられる。こうした傾向が暴力の連鎖を生む一因になっていないか」と懸念を表明。「銃や爆発物の製造方法がインターネットに掲載され、誰でも見られる時代だ。AI(人工知能)で危険な情報を探知し、削除する取り組みを進める必要がある」と、テロ対策を具体的に提案した。

 要人警護の課題の一つは政治家と有権者との距離の取り方だ。徳島は「選挙では政治家と有権者が直接的にふれ合うことを重視しているとあって、極端に物理的な制限を設けるのは難しい。行き過ぎた警備は警察による言論制約につながる恐れ」もあると指摘した。西日本は「政党が要人と聴衆との距離を縮めたいと考えるのも理解できる。死角をなくすには、警察と政党、支援団体の緊密な協力が不可欠だ」とした。神戸は政治家らに向け「自身の安全を守ることは有権者を守り、民主主義を守ることでもある。政治家はその自覚を持たなければならない」と求めた。

 岸田政権にはさまざまな注文が付いた。産経は「首相は特に外交・安全保障分野で、安倍氏が敷いた路線を発展させてきた」と評価。一方、安倍氏が訴えた、米国の核兵器を共同運用する「核共有」の議論については「国民を守るのに不可欠な核抑止態勢は不安が残ったままだ。岸田首相は理想としての核軍縮を説くのと同時に、今このときに国民を守る核抑止の充実強化にも動くべきだ」と主張した。

 岸田政権の防衛政策や原発回帰の政策などについて、信濃毎日は「政権延命のため、ただ保守層の支持を強く意識している。安倍氏の『遺志』という呪縛から解かれていない」との見方を示した。琉球は「安倍政権下で本格化した『戦争ができる国づくり』は、現岸田政権で戦後日本の防衛政策の基本であった『専守防衛』を逸脱する安保関連3文書の閣議決定に至った。この方針に基づく軍備増強が沖縄で進んでいる」と批判した。

 民主主義の危機にあるという認識に立った論調も少なくなかった。神奈川は安倍政権を巡り「在任3188日の間に、この政権が民主主義の根幹を著しく損なってきたことを忘れてはなるまい」と指摘。「負の側面をあらためて見つめ直し、閉塞感漂う政治を変えていく必要があろう」と主張した。「安倍政権以降の自民党政治が見せつけているのは、首相がその気になれば際限ない『強権政治』が可能になるという制度的な欠陥である」(朝日)、「社会のひずみを直視し、安倍政権以来の強権政治から脱却を図る必要がある」(北海道)などの意見があった。

旧統一教会問題の解明を

 政治と旧統一教会との不透明な関係については、日経が「岸田首相は自民党として関係を断絶すると言明したが、過去の経緯を含め検証がすんだとはいえない。政策決定への影響などはなかったのか。『すでに終わった話』と考えているとすれば、有権者の不信は拭えない」と論じた。山形も「被害者救済や再発防止の取り組みを前に進めるためにも、疑惑の封印を許してはならない」と訴えた。

 文化庁が調査している教団の不法行為を巡り、山口は「組織性、悪質性、継続性」という解散命令の要件が当てはまるのかについて「透明性ある手続きに従って、国民の期待に応える結論を望みたい」とした。

 安倍氏の国葬も議論を呼んだ。山陽は「かねて政治家と国葬の関係について、戦後日本の民主主義社会になじまないとの指摘がある。国葬を断行した首相は実施の必要性から議論し、問題点は自らの手で解消する責任があると自覚すべきである」と主張した。(審査室)

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