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2023年 11月14日
被害者救済に「本腰を」 旧統一教会への解散命令請求

政界との関係 検証不十分

 安倍晋三元首相の銃撃事件から約1年3か月がたった10月13日。盛山正仁文部科学相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求した。高額献金や霊感商法が社会を揺るがしてきた教団問題は大きな節目を迎えた。各紙の社説・論説は、被害者救済は緒に就いたばかりであり、課題は山積していると評した。

 各紙が厳しく問うたのは教団と政治の不透明な関係だ。

 朝日は「大きな疑問は、なぜこれまで抜本的な手を打てなかったのかだ。長年に及ぶ被害を放置した政治の責任は重い」と言及。とりわけ自民党については「半世紀以上にわたり密接な関係を築き保ち続けてきた。その『闇』は深い。解散請求に踏み切るだけでは、岸田政権は責任を果たしたことにはならない」と論じた。

 毎日も「解散命令請求だけで国の責務が果たされるわけではない」とし、「自民党議員らが選挙で応援を受けるなど、教団側とのかかわりが明らかになったが、調査は徹底されていない」とみた。

 日経は今回の解散請求を「妥当な判断」とした。その上で「請求をして事足れり、ではない。なぜ、社会通念を逸脱した行為が長年続いたのか。政府や国会に検証を求めたい」と指摘した。

 中日・東京は「請求は問題解決に向けた『はじめの一歩』にすぎない」として「解散命令を請求しても政界と教団とのこれまでの関係を不問に付すことはできない」と断じた。

 秋田魁は「岸田政権は問題を抱える教団と政治家が関係を持ってきた過去を改めて省み、司法とは独立して検証するとともに関係断絶を徹底すべきだ」と注文を付けた。京都は「何より、銃撃事件で明るみに出た自民党と旧統一教会の関係は、全容解明に程遠い。岸田文雄首相は『関係を絶つ』と宣言したが、議員の自己申告に委ねたままである」と説いた。

宗教2世への支援必要

 被害者救済については、各紙が実効性の高い対策や「宗教2世」らへの支援を強く求めた。

 神奈川は政府の判断は妥当としつつ「被害者の多さと苦しみを考えれば、あまりに遅いと指摘せざるを得ない」と強調。救済に向けて「政府はさらに本腰を入れるべきだ」と促した。

 産経は審理の長期化によって教団の財産が散逸する懸念があるとし「教団が財産を海外などに移転できないようにする必要がある。政府や与野党は、特別措置法の制定などの対応を検討してもらいたい」と求めた。また、解散請求は「元首相を暗殺したテロリストの犯行を正当化するものではない」と付け加えた。

 福島民友は「教団が解散すれば全ての問題が解決するわけではない。多くの被害者は救済されておらず、信者の親を持つ『宗教2世』や被害者の家族の問題が残されている」と課題を挙げた。

 琉球も「解散命令請求は『宗教2世』が受けた精神的苦痛も大きな根拠となった。被害者ヒアリングでは高額献金の影響で『貧しい幼少期を過ごした』『大学進学を断念した』などの訴えが寄せられた。『宗教2世』も救済の対象としなければならない」と論じた。

情報公開巡る指摘続々

 請求手続きに至った一連の説明や今後非公開で行われる裁判について、情報公開の観点から多くの社が注文を付けた。

 読売は「宗教法人を所管する文化庁の対応には疑問が残る。昨年11月以降、宗教法人法に基づき、教団に対して7回、質問権を行使し、組織運営や収支に関する報告を求めてきたが、その質問内容を公開していない。『調査に支障がある』と言うが、解散請求に踏み切った以上、教団側に何を質問し、教団側が何を答え、何を答えなかったか、概略だけでも公表すべきではないか」と指摘した。

 北海道は「文科省による経過説明は欠かせないが、意見を聞いた宗教法人審議会の議事内容も明らかにされていない。開示すべきである」と主張。信濃毎日も「政府は、どのような調査結果や証言に基づいて解散命令を請求できると判断したのか、根拠を明確に示す必要がある」と情報公開を求めた。

 熊本日日は「審理には透明性が求められる。裁判所の審理は非公開で行われる。文化庁は調査結果の詳細を公表していないが、今後可能な限り明らかにしてほしい。国と教団の双方の主張がどう判断されたのか、検証できる機会を確保するべきだ」と説いた。

 下野、岐阜、日本海などは「解散命令請求の裁判は非公開だ。政府は今回の発表に際して説明文書を配布したが、内容は概略にとどまり、具体性に乏しかった。今回の請求は宗教法人を巡る重要な前例となり、いずれ制度の検証も必要になろう。政府には適時に国民に十分な説明をするよう要求したい」と訴えた。(審査室)

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