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2024年 1月16日
対話重ねる重要性強調 紛争の時代 在京6紙新年号

平和回復 日本が呼び掛けを

 ロシアのウクライナ侵攻と、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突の出口が見えず、国内では自民党派閥の裏金疑惑で政治不信が広がる。新型コロナウイルスの「5類移行」で日常は戻りつつあるものの、内外の情勢はなお厳しい。在京6紙は元日付で、国内外のさまざまな危機を反映する紙面を展開した。1面トップは朝日と読売、産経が独自ニュース。毎日、日経、東京は連載を据えた。社説・論説では、戦争、紛争の防止や分断の回避、平和や自由の尊重を求める論調が目立った。元日に能登半島地震が発生、2日に羽田空港で日航機と海保機が衝突と惨事が続き、元日付までに始めた連載を一時休載するケースが相次いだ。

ニュースと連載3紙ずつ

 【1面トップ】読売「移植見送り60件超 東大・京大・東北大 昨年 臓器提供集中で 他施設搬送も」=脳死者から提供された臓器の移植手術実績が上位の3大学病院で、人員や病床などの制約から臓器の受け入れを断念するケースが相次いでいると報じた。提供件数が大きく伸び、限られた移植施設に要請が集中することが原因で、受け入れ体制の脆弱さが浮き彫りになったとした。日本臓器移植ネットワークの公表資料を基に、データベースを作成して分析したという。

 朝日「安倍派『中抜き』裏金8000万円か 派閥に納めず 下村氏約500万円 5年で十数人」=自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティーを巡る事件で、所属議員が販売ノルマを超えて集めた収入を派閥に納めずに手元で裏金にした疑いがある総額が、直近5年間で少なくとも約8千万円に上ると伝えた。こうした「中抜き」は十数人の議員で1千数百万円~数十万円が確認され、事務総長経験者では元党政調会長の下村博文氏が約500万円だったとした。

 産経「森元首相の関与有無 解明へ 東京地検 安倍派不記載20年超す」=自民党派閥のパーティー収入不記載事件で、東京地検特捜部が安倍派元会長の森喜朗元首相の関与の有無について確認を進めていると報じた。安倍派は20年以上前からパーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載せずに議員に還流していたと指摘。特捜部は、森氏が還流のスキーム維持や議員側からの相談などに関わった可能性も視野に入れ、実態解明に乗り出すもようだと伝えた。

 毎日「遮音(ミュート)社会① 『正義』の牙 突如私に 信じた配信者『俺のストーカー』」=「私たちは尊重すべき他者の声に耳を塞(ふさ)ぎながら生きていないだろうか」と問題提起。「白か黒か」で割り切れるほど単純ではない社会の中で、「遮音(ミュート)」が誤解や分断を生んでいるとし、その現場をたどった。初回は、私人逮捕系などのユーチューバーについて、「崇拝」したことを悔やむ女性や、今も突き放す気になれない親子の姿を通じて、「遮音社会」のひずみを描き出した。

 日経「昭和99年 ニッポン反転① 解き放て」=昭和だと99年目にあたる2024年、日本は30年余り続く停滞から抜け出す好機にあると位置付けた。日本を世界第2位の経済大国に成長させた昭和のシステムは時代に合わなくなったとして、日本を「古き良き」から解き放ち、大きく作り変えることを提唱した。そのための課題は多いが出尽くしているとした上で、変化を受け入れ、若い力を最大限に引き出せば、成長する国に若返ることができると訴えた。

 東京「みんなが主人公 まちを変える① 声上げた 政治が動いた 周到な請願 再生エネ促進」=自ら声を上げることで、まちを動かしていこうと取り組む「主人公たち」の姿を追った。東京都港区でチョコレート店を営む男性は、自治体に脱炭素を促す市民グループに加わり、請願で地方議会に働き掛けるすべを学んだ後、活動地域を広げて実践。二酸化炭素の実質排出ゼロを目指すとする自治体の「ゼロカーボンシティ宣言」につながった。「有権者の政治参画って投票だけじゃない」という区議の声も伝えた。

争い防ぐ関心と関与必要

 【社説・論説】朝日「紛争多発の時代に 暴力を許さぬ 関心と関与を」=世界各地で紛争が多発し、解決を見ないまま年をまたいだ国際情勢を見渡した上で、ガザの過酷な状況を伝える同紙通信員の報告を写真を添えて紹介。ウクライナやガザの戦争の教訓は、ひとたび始まれば誰にも止めがたくなることと、憎悪と不信の蓄積という土壌や予兆があることだとし、「争いの芽を摘む関心と関与を忘れぬ年としたい」と結んだ。

 毎日「超える'24 二つの戦争と世界 人類の危機克服に英知を」=欧州と中東で二つの戦争が続き、国際社会は「人類の危機」に直面していると指摘。国際社会に求められているのは一人でも多くの命を救うための迅速な行動だと唱えた。国際司法裁判所の権限拡充や国連総会と事務総長の関与強化も必要だとした上で「争いを話し合いで解決する忍耐強さと、他者との共生の道を模索する英知が求められている」と訴えた。

 読売「磁力と発信力を向上させたい 平和、自由、人道で新時代開け」=人道、平和、自由を求める人間社会の「共通感覚」を出発点とし、平和の回復と新しい秩序作りを世界に呼び掛けることが日本の使命だと説いた。そのためにも多彩な魅力で世界の人々を引きつける日本の磁力を高めたいとした。デジタル技術や人口減少など日本社会が直面する課題を概観した上で、創刊150周年の今年、「読売信条」として掲げる「自由主義、人間主義、国際主義」を起点に平和への貢献に力を尽くすと誓った。

 日経「分断回避に対話の努力を続けよう」=民主主義と権威主義の国家間だけではなく、民主主義の国の中でも深刻な分断につながるリスクが高まっていると指摘。多くの国で重要な選挙がある今年、民主主義の国でも対話の必要性は増していると論じた。経済分野や気候変動問題など地球規模の課題解決のためにも世界で対話をもっと重ねる必要があると主張した。国家、企業、個人の各レベルで対話を増やす年にしたいとし、「銃や暴力ではなく話し合いで物事を解決する力を磨きたい」と願った。

 産経「年のはじめに 『内向き日本』では中国が嗤(わら)う」=世界で重要選挙がめじろ押しであり、ロシアのウクライナ侵略とイスラエル対ハマスの紛争も続く。日本や世界の行く末に大きく影響するものばかりで、国際政治上の暴風圏に突入する年だと分析。国内では自民党派閥のパーティー券問題で政治改革が重要課題となったが、この問題一色に染まり、外交安保政策の遂行をおろそかにしては中国を抑止しきれず、一層傍若無人な振る舞いを許しかねないと警告した。

 東京「贈り物でなく預かり物 年のはじめに考える」=「地球異変」を印象付ける事象が世界中で相次いでいるとして、「地球は先祖からの贈り物ではない。子孫からの預かり物だ」というアメリカ先住民の言い伝えが「何とも耳に痛い」と記した。国内では借金頼みで財政健全化に取り組もうとしない姿勢が代々の自民党政権に共通していると指摘。国もまた子孫からの預かり物だと考えれば、将来世代につけを回すことはできないはずだと論じた。

 【主な連載企画】1面トップで始まった毎日「遮音社会」、日経「昭和99年 ニッポン反転」、東京「みんなが主人公 まちを変える」のほか、以下など。朝日=1・2・3面「8がけ社会 縮小の先に」、国際面「私のスイッチ 人生の決断」、毎日=3面「コモンエイジ 公共のかたち」(12月31日1・3面から)、読売=文化面「遊びをせんとや 仕事をせんとや」、くらし面「男らしさって?」、日経=国際面「世界を読む」、産経=1・3面「『移民』と日本人 今年起きること」、社会面「二兎を追う しなやかな生き方」、東京=社会面「芽吹く 2024」

 【元日号ページ数(かっこ内の数字は2023、22年の順)】朝日88(86、92)▽毎日60(64、68)▽読売88(86、86)▽日経92(92、92)▽産経64(68、72)▽東京42(46、46)(審査室)

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